
伝説のスーパーカー、ランボルギーニ・カウンタック。その名を耳にしたことはあっても、数多くのモデルが存在するために、全体像を掴むのは難しいかもしれません。
特に有名なカウンタック LP400 LP500 違いを調べているうちに、カウンタックの歴代や種類について、さらに深く知りたくなった方も多いのではないでしょうか。幻のプロトタイプのLP500の値段、そして初代市販モデルであるLP400の相場はいくらなのか。また、ウルフ・カウンタックから生まれたLP500sや最強のクワトロ、最終進化形である25thアニバーサリーの価格はどれくらい違うのか。
さらには、熱心なファンの間で語られるローボディの存在や、オーナー必須の技術といわれるカウンタックリバース、そして当時の衝撃を物語る口コミ・感想レビューまで、知りたいことは尽きないはずです。
この記事では、そうした疑問に一つひとつ丁寧にお答えしていきます。カウンタックの奥深い世界の探求を、ここから始めましょう。
- 試作車と市販車という決定的で根本的な関係
- 両モデルの希少性と現在の市場での取引価格
- 歴代モデルの中での両車の歴史的な立ち位置
- 伝説の始まりから最終形までの進化の全貌
カウンタックLP400とLP500の主な違いを徹底解説

- 伝説の始まり、カウンタックの歴代と種類
- 幻のプロトタイプ、LP500の値段と価値
- 市販初代モデル、LP400の気になる相場
- ピュアを極めた希少な初期型「ローボディ」
- 当時の衝撃がわかる口コミ・感想レビュー
伝説の始まり、カウンタックの歴代と種類
ランボルギーニ・カウンタックは、単一のモデルではなく、約16年という長い生産期間を通じて進化を続けた、伝説的なスーパーカーの系譜です。その歴史は、1971年に衝撃的なデビューを飾ったプロトタイプから始まり、時代ごとの要求に応える形で様々な種類が誕生しました。
カウンタックがこれほど多くのバリエーションを持つ理由は、その革新的なデザインと性能にあります。カロッツェリア・ベルトーネの鬼才マルチェロ・ガンディーニによって生み出された未来的なスタイリングは、当初のデザインを尊重しつつも、エンジンの冷却性能の向上や空力特性の改善、そしてライバル車種との競争力維持のために、絶えず改良が加えられる必要があったのです。
このため、初代市販モデルのLP400から、最終モデルの25thアニバーサリーまで、スタイリングやエンジン、仕様が異なる複数のモデルが生産されました。
具体的に、カウンタックの主な歴代モデルとその特徴は以下の表の通りです。各モデルがどのような進化を遂げたのかを知ることで、カウンタックという自動車の持つ奥深い歴史が見えてきます。
モデル名 | 生産期間 | エンジン排気量 | 最高出力 | 生産台数 | 主な特徴 |
---|---|---|---|---|---|
LP500 | 1971年 | 4,971cc | 446PS | 1台 | プロトタイプ。全ての始まりとなったコンセプトカー。 |
LP400 | 1974-1978年 | 3,929cc | 375PS | 約152台 | 最初の市販モデル。ピュアなデザインで人気が高い。 |
LP400S | 1978-1982年 | 3,929cc | 353PS | 約237台 | オーバーフェンダーとワイドタイヤを装着。 |
LP500S | 1982-1985年 | 4,754cc | 375PS | 約323台 | 排気量を拡大しトルクを向上。リアの表記は5000S。 |
5000QV | 1985-1988年 | 5,167cc | 455PS | 約610台 | エンジンを4バルブ化 (クワトロバルボーレ)。 |
25th アニバーサリー | 1988-1990年 | 5,167cc | 455PS | 約657台 | 最終モデル。オラチオ・パガーニによるリデザイン。 |
このようにカウンタックの歴史は、一台のプロトタイプから始まり、絶え間ない技術革新とデザインの洗練を経て、多様なモデルへと派生していきました。それぞれの車種が持つ独自の背景と特徴を知ることは、スーパーカーの歴史そのものを理解する上で非常に重要といえるでしょう。
幻のプロトタイプ、LP500の値段と価値

カウンタックLP500は、1971年のジュネーブ・モーターショーで世界に衝撃を与えた伝説のプロトタイプであり、その価値は一般的な中古車のように値段で測ることはできません。なぜなら、この車両は市販を目的としないワンオフのコンセプトカーであり、しかも現存しないため、その価値は「歴史的・文化的なもの」として認識されています。
LP500がプライスレスな価値を持つ理由は主に三つ挙げられます。
第一に、後世に続くすべてのカウンタックのオリジナルデザインである点です。マルチェロ・ガンディーニが描いた最もピュアなスタイリングを持ち、市販化にあたって追加されたエアダクトやフェンダーを持たない、滑らかなボディラインが特徴でした。
第二に、たった1台しか製造されなかったという絶対的な希少性です。このクルマはあくまで量産に向けた「アイデアカー」としての役割を担っていました。
そして第三に、その唯一無二の車両が1974年にヨーロッパの型式認証を取得するためのクラッシュテストで破壊され、物理的に失われてしまったという事実が、その伝説性を不動のものにしています。
このLP500の計り知れない価値を具体的に示す出来事として、ランボルギーニ自身のレストア部門である「ポロ・ストリコ」が手がけた復刻プロジェクトがあります。ある熱心なコレクターからの依頼で2017年にスタートしたこのプロジェクトは、当時の写真や設計図を元に、失われたLP500を寸分違わず再現するという壮大なものでした。
ランボルギーニの発表によれば、この再現には延べ25,000時間以上が費やされたとされています。(出典:アウトモビリ・ランボルギーニ公式サイト)その費用は公表されていませんが、メーカー自身が膨大な時間と技術を投じて一台を復元したという事実こそが、LP500の価値が金銭を超越していることの何よりの証明です。
結論として、カウンタックLP500に具体的な値段は存在しません。それは自動車史に燦然と輝く芸術作品であり、その価値は「価格」ではなく、後世に与えた影響の大きさと、失われたことによる永遠の憧れの中にのみ見出すことができるのです。
市販初代モデル、LP400の気になる相場
カウンタック初の市販モデルであるLP400は、現在クラシック・スーパーカー市場において極めて高い評価を受けており、その相場は1億円を優に超えるのが一般的です。状態の良い車両であれば、2億円以上に達することも珍しくなく、コレクターズアイテムとして確固たる地位を築いています。
LP400の価格がこれほど高騰している背景には、いくつかの明確な理由が存在します。最大の要因は、その希少性です。1974年から1977年までに生産された台数は、わずか150台から152台程度とされており、現存する個体は非常に限られています。
また、デザイン面でもLP400は特別な存在です。後継モデルで追加されたオーバーフェンダーやリアウイングを持たない、最も純粋でクリーンなスタイリングは、デザイナーであるマルチェロ・ガンディーニの意図を最も忠実に反映していると評価されています。特に、ルーフに設けられた潜望鏡のような後方確認用の凹みから「ペリスコピオ」と呼ばれる初期型は、その特徴的なデザインから特に人気を集めています。
具体的な市場価格を見ると、LP400は常に高値で取引されています。
オークションでの落札価格や専門店の販売価格は、車両のコンディション、走行距離、修復歴の有無、そしてオリジナルパーツがどれだけ残っているかによって大きく変動します。例えば、フルレストアが施され、オリジナルの状態を完璧に維持している車両であれば、相場を大きく上回る価格で取引されることもあります。
逆に言えば、それだけの資産価値があるからこそ、多くのオーナーが莫大な費用をかけてでも最高のコンディションを維持しようと努めるのです。
このように、カウンタックLP400の現在の相場は、単なる中古車価格ではなく、その歴史的価値、希少性、そして芸術的なデザイン性といった多くの要素が複合的に反映された結果と言えます。生産台数の少なさを考えれば、今後その価値が下がることは考えにくく、コレクターにとって憧れの対象であり続けることは間違いないでしょう。
ピュアを極めた希少な初期型「ローボディ」

カウンタックの中でも特にエンスージアストから熱い視線を集めるのが、LP400Sの初期生産型、通称「ローボディ」です。これは、カウンタックが持つ本来の低いシルエットと、後継モデルの迫力を兼ね備えた、わずかな期間のみに製造された希少なモデルを指します。
「ローボディ」という呼称が生まれた背景には、カウンタックの進化の過程があります。1978年に登場したLP400Sは、LP400をベースにワイドなピレリP7タイヤを装着するため、力強いオーバーフェンダーが追加されました。しかし、生産初期のシリーズ1(約50台)とシリーズ2(約105台)までは、LP400譲りの低いサスペンション設定とルーフ高が維持されていたのです。
その後、1981年頃に登場したシリーズ3からは、乗員の快適性向上のためにルーフ高が約3cm高い「ハイボディ」へと設計変更されました。この変更によって、それ以前の低い車体を持つモデルが「ローボディ」として明確に区別されるようになったのです。
このローボディがいかに特別であるかは、その仕様からも伺えます。以下の表でローボディとハイボディの主な違いを比較してみましょう。
項目 | ローボディ | ハイボディ |
---|---|---|
対象モデル | LP400S シリーズ1 / シリーズ2 | LP400S シリーズ3以降 |
生産期間(目安) | 1978年〜1981年初頭 | 1981年〜1982年 |
ルーフ高 | 低い(LP400に準ずる) | 約3cm高い |
ホイール(シリーズ1) | カンパニョーロ製「ブラボー」ホイール | OZ製ホイール |
メーター類 | LP400と共通のスチュワートワーナー製 | 更新されたメーターパネル |
特徴 | タイトな居住性だが、低重心でシャープな印象。 | ヘッドクリアランスが拡大し、居住性が向上。 |
ランボルギーニの創業者フェルッチョ・ランボルギーニが所有していたカウンタックも、このローボディ(シリーズ2)であったという事実は、その素性の良さを物語るエピソードと言えます。
結論として、「ローボディ」はカウンタックLP400の持つピュアなプロポーションと、LP400Sの持つグラマラスな迫力が最も美しい形で融合した、過渡期の特別なモデルです。その希少性と唯一無二のスタイリングは、カウンタックの歴史において特別な輝きを放ち、多くの自動車愛好家にとって究極の憧れとなっています。
当時の衝撃がわかる口コミ・感想レビュー
ランボルギーニ・カウンタックが1971年に発表された際、現代のようなインターネット上の口コミサイトは存在しませんでしたが、その衝撃の大きさは当時の自動車雑誌の論調や、社会現象となった「スーパーカーブーム」を通じて鮮明に伝わってきます。それは個人の感想を超え、時代そのものが発信した熱狂的なレビューでした。
カウンタックが人々に与えた衝撃の源泉は、その常識を覆すデザインと公称スペックにありました。マルチェロ・ガンディーニが手掛けた、まるで地面から削り出したかのような極端なウェッジシェイプと、未来的なシザードアは、それまでの自動車デザインとは全く異なる次元のものでした。
その驚きは、イタリア・ピエモンテ地方の方言で「Contacc!(クンタッチ!)」という感嘆詞がそのまま車名になったという有名なエピソードにも表れています。さらに、公称された「最高速度300km/h」という数値は、当時の人々にとってまさに夢物語であり、カウンタックを「地上を走る戦闘機」として認識させるのに十分なインパクトを持っていました。
当時の専門家や自動車ジャーナリストたちは、カウンタックを「公道を走る宇宙船」「異次元からの使者」といった言葉で賞賛しました。もちろん、極端に悪い後方視界や、高速走行時の空力的な不安定さ、タイトな運転席といったデメリットも冷静に指摘されていました。しかし、そうした欠点ですら、このクルマが日常からかけ離れた「スーパーカー」であることを証明する魅力的な要素として語られたのです。
日本においては、この衝撃が1970年代後半に巨大なムーブメントを引き起こします。子どもたちはカウンタックの写真やスペックに目を輝かせ、スーパーカーショーにはカメラを抱えた少年たちが長蛇の列を作りました。この熱狂は、特定の個人の口コミやレビューではなく、社会全体がカウンタックという存在に驚き、憧れたことの証左です。
カウンタックに対する評価は、単なる性能やデザインのレビューに留まらず、一つの文化現象として歴史に刻まれています。その衝撃的なデビューから半世紀が経過した現在でも、カウンタックは「スーパーカー」という言葉が持つ本来の夢と興奮を、私たちに伝え続けてくれる特別な存在なのです。
カウンタックLP400とLP500の違いと比較すべき後継モデル

- ウルフ・カウンタックから生まれたLP500s
- 4バルブ化された5000クワトロバルボーレ
- 最終進化形、25thアニバーサリーの価格
- オーナー必須の技術カウンタックリバースとは
- 歴代モデルのスペックを一覧で比較
- カウンタックは永遠のスーパーカー
ウルフ・カウンタックから生まれたLP500s
ランボルギーニ・カウンタックLP500S(車両のエンブレム表記は5000S)は、一人の熱狂的なオーナーの情熱から生まれたモデルです。そのルーツは、カナダの石油王でありF1チームのオーナーでもあったウォルター・ウルフ氏が特注した、通称「ウルフ・カウンタック」にあります。彼の飽くなき探求心が、後のカウンタックの方向性を決定づけることになりました。
ウォルター・ウルフ氏は、自身が所有していた市販第一号モデルLP400の性能に満足できず、よりパワフルで空力的に優れたスペシャルモデルの製作をランボルギーニに依頼しました。この依頼を受け、当時ランボルギーニの技術顧問であったジャンパオロ・ダラーラらが開発を担当。
こうして生まれたのが、巨大なリアウイングとオーバーフェンダーを装着し、排気量を拡大したV12エンジンを搭載する、伝説的な「ウルフ・カウンタック」1号車、2号車でした。これらのスペシャルモデルが世界中の自動車ファンの間で絶大な人気を博したことから、ランボルギーニは市販モデルにもその要素を取り入れることを決断します。
この流れは段階的に進められました。まず1978年に、ウルフ・カウンタックのスタイリング(オーバーフェンダー、ワイドタイヤ、オプションのリアウイング)を取り入れた「LP400S」が登場します。しかし、この時点ではエンジンはLP400と同じ3.9リッターのままでした。そして1982年、ついに排気量を4,754ccまで拡大したエンジンを搭載する「LP500S」がデビューするのです。
このモデルは、ウルフ氏が求めた「スタイル」と「パワー」の両方を市販車として具現化したものであり、最高出力こそLP400と同じ375PSでしたが、排気量アップによって増大したトルクが、より扱いやすく力強い走行性能を実現しました。
このように、カウンタックLP500Sは、単なるメーカー主導のモデルチェンジではなく、一人の顧客の理想を追求する過程で生まれたプロトタイプが市販化へと繋がった、非常に稀有な成り立ちを持つモデルです。ウルフ・カウンタックが確立したアグレッシブなスタイルは、以降のカウンタックの象徴となり、スーパーカーの歴史にその名を深く刻み込みました。
4バルブ化された5000クワトロバルボーレ

1985年に登場したカウンタック5000クワトロバルボーレ(QV)は、その心臓部であるV12エンジンに最も大きな技術的進化がもたらされたモデルです。ライバルであるフェラーリ・テスタロッサの登場に対抗すべく、ランボルギーニが持てる技術の粋を結集して開発したこの車両は、カウンタック史上最強のパフォーマンスを誇ります。
その進化の核心は、車名にもなっている「クワトロバルボーレ」、すなわち1気筒あたり4バルブ化されたシリンダーヘッドの採用にあります。従来の2バルブ方式から吸排気バルブを倍増させることで、エンジンの呼吸効率、つまり混合気の充填と燃焼ガスの排出が劇的に向上しました。
これに合わせて総排気量も5,167ccへと拡大。ヨーロッパ仕様では、6基のウェーバー製キャブレターをエンジンの上部に配置するダウンドラフト方式に変更し、最高出力はLP500Sから80PSも向上した455PSに達しました。
LP500Sから5000クワトロバルボーレへの技術的な飛躍は、以下の比較表でより明確に理解できます。
仕様 | LP500S | 5000クワトロバルボーレ |
---|---|---|
バルブ形式 | 2バルブ / 1気筒 | 4バルブ / 1気筒 |
総排気量 | 4,754cc | 5,167cc |
キャブレター仕様 | サイドドラフト方式 | ダウンドラフト方式(欧州仕様) |
最高出力 | 375PS / 7,000rpm | 455PS / 7,000rpm |
最大トルク | 41.8kgm / 4,500rpm | 51.0kgm / 5,200rpm |
外観上の主な変更点 | LP400Sから大きな変更はなし | エンジンフード中央のパワーバルジ |
このダウンドラフトキャブレターを収めるため、エンジンフードには特徴的な盛り上がり(パワーバルジ)が設けられ、これがクワトロバルボーレの外観を識別する最大のポイントとなっています。
結論として、5000クワトロバルボーレは、カウンタックの歴史におけるパフォーマンスの頂点を示すモデルです。単なる排気量アップに留まらない本格的なエンジンチューニングによって、スーパーカーの盟主としての地位を揺るぎないものにしました。その圧倒的なパワーと存在感は、今なお多くのファンを魅了し続けています。
最終進化形、25thアニバーサリーの価格
1988年にランボルギーニ創立25周年を記念して発表された「25thアニバーサリー」は、カウンタックの最終生産モデルです。このモデルは、歴代カウンタックの中で最も多い約657台が生産されたこともあり、現在の中古車市場では、希少な初期モデルと比較して価格が比較的手頃な傾向にあります。
25thアニバーサリーの価格設定には、いくつかの要因が影響しています。最大の理由は、前述の通り生産台数の多さです。LP400が約150台しか生産されなかったのに対し、その4倍以上の個体が存在するため、市場での流通量が多く、価格が相対的に安定しています。また、スタイリングも価格に影響を与える一因です。
当時ランボルギーニに在籍していたオラチオ・パガーニ(後のパガーニ・アウトモビリ創業者)がリデザインを手掛け、エアインテークやバンパー形状がより滑らかで現代的なものに改められました。このデザインは、初期モデルのシャープさを好むファンからは好みが分かれる一方で、最も洗練されたスタイルとして評価する声も多くあります。
現在の市場における25thアニバーサリーの本体価格は、車両の状態によって大きく異なりますが、一般的に5,000万円から8,000万円前後で取引されることが多いようです。もちろんこれは、数十年にわたる価値の上昇を経た価格であり、発売当時の価格とは大きく異なります。
バブル経済崩壊直後の1991年には、新車価格が2,380万円だったという記録も残っており、その後のクラシックカー市場の隆盛を物語っています。希少なLP400が2億円を超える価格で取引されることを考えると、25thアニバーサリーはカウンタック・ファミリーへの「入り口」として、相対的に現実的な選択肢と言えるかもしれません。
最終モデルである25thアニバーサリーは、カウンタックの歴史の集大成です。メカニズムはパワフルな5000QVをベースとしながら、スタイリングを洗練させ、シリーズ最速の性能を誇ります。その価格は、生産台数の多さから初期モデルほど極端な高騰は見せませんが、カウンタック伝説の最終章を飾るにふさわしい価値と人気を維持し続けているのです。
オーナー必須の技術カウンタックリバースとは

「カウンタックリバース」とは、ランボルギーニ・カウンタックのオーナーが後退(リバース)する際に用いる、独特の運転技術のことです。これは単なるパフォーマンスではなく、車両の構造的な特性から生まれた、実用上不可欠な操縦方法として知られています。
この技術が必要とされる理由は、カウンタックの極端に悪い後方視界にあります。低く構えたルーフライン、V型12気筒エンジンを収める巨大なエンジンフード、そして申し訳程度にしか開いていないリアウィンドウにより、室内のバックミラーはほとんど役に立ちません。
特にオーバーフェンダーやリアウイングが装着された後期モデルでは、車体の幅や後方の障害物を正確に把握することは極めて困難です。この設計上の問題を解決するため、オーナーたちは必然的にこの独自の方法を編み出すことになりました。
カウンタックリバースの具体的な手順は、以下の通りです。
- まず、運転席のシザードアを真上に開け放ちます。
- 次に、ドアを開けたままの状態で、運転席から体を乗り出し、幅の広いサイドシルに腰掛けます。
- この体勢のまま、足でペダル類を操作し、手でステアリングを操ります。
- 顔と上半身を完全に車外に出し、自分の目で直接後方を確認しながら、車両を後退させていきます。
この一連の動作は、硬いクラッチや繊細なアクセルワークが求められるため、相応の習熟を要します。しかし、この姿はカウンタックを乗りこなしている象徴とされ、イベント会場などで披露されることも少なくありません。まさに、常識外れのスーパーカーを所有し、運転するためにオーナーに求められる「儀式」とも言えるでしょう。
結論として、カウンタックリバースは、このクルマがスタイルと性能を最優先し、実用性を度外視して設計されたことの最も象徴的な現れです。多大な不便さを受け入れてでも、それを乗りこなすことに喜びを見出す。この技術は、カウンタックという自動車の持つ本質と、オーナーの情熱を物語る、伝説的なドライビングテクニックなのです。
歴代モデルのスペックを一覧で比較
カウンタックが約16年の長きにわたり、どのように進化を遂げていったのかを理解するには、歴代モデルのスペックを直接比較することが最も有効な方法です。初期のピュアなモデルから、最終的なハイパワーモデルまで、その数値の変遷はスーパーカーの歴史そのものを物語っています。
各モデルのスペックには、その時代の技術的な到達点や市場の要求が色濃く反映されています。例えば、LP400からLP400Sへの進化では、全幅が大きく拡大しました。これは、よりワイドなタイヤを装着してコーナリング性能を高めるという明確な目的があったためです。
また、LP500Sから5000QVにかけては、最高出力が飛躍的に向上しており、80年代のスーパーカーにおけるパワー競争の激しさを伺わせます。
以下の表は、カウンタックの主要な市販モデルのスペックをまとめたものです。この一覧を見れば、全長や車重、そして心臓部であるV12エンジンの性能が、時代と共にどう変化していったかが一目瞭然となります。
仕様 | LP400 | LP400S | LP500S | 5000QV | 25th アニバーサリー |
---|---|---|---|---|---|
全長 | 4,140mm | 4,140mm | 4,140mm | 4,140mm | 4,200mm |
全幅 | 1,890mm | 1,995mm | 1,995mm | 2,000mm | 2,000mm |
全高 | 1,070mm | 1,029mm | 1,029mm | 1,070mm | 1,070mm |
車両重量 | 1,065kg | 1,351kg | 1,490kg | 1,490kg | 1,680kg |
総排気量 | 3,929cc | 3,929cc | 4,754cc | 5,167cc | 5,167cc |
最高出力 | 375PS | 353PS | 375PS | 455PS | 455PS |
最大トルク | 36.8kgm | 37.0kgm | 41.7kgm | 51.0kgm | 51.0kgm |
最高速度(公称) | 300km/h | 292km/h | 300km/h | 298km/h | 295km/h |
このスペック比較表は、カウンタックが単に外観を変えてきただけでなく、その中身も絶えず進化させてきたことを客観的な数値で示しています。一台の自動車がこれほどまでにドラマチックな変遷を遂げた例は稀であり、これこそがカウンタックの持つ魅力の源泉の一つなのです。
カウンタックは永遠のスーパーカー

ランボルギーニ・カウンタックは、その誕生から半世紀近くが経過した現在においても、色褪せることのない輝きを放つ「永遠のスーパーカー」です。幻のプロトタイプLP500から始まり、市販初代モデルLP400を経て、最終進化形である25thアニバーサリーに至るまで、その全てのモデルが自動車史における金字塔として語り継がれています。
この記事を通じて解説してきたように、カウンタックの歴史は絶え間ない進化の繰り返しでした。LP500という純粋な夢の形から、LP400という現実の市販車が生まれ、その後はウォルター・ウルフの情熱がLP500Sを生み、ライバルとの競争が最強の5000QVを誕生させました。
それぞれのモデルには独自の背景と物語があり、単なるスペックの違いだけでは語り尽くせない深い魅力があります。その希少性と圧倒的な存在感は、現代のクラシックカー市場においても絶大な評価を受け、全てのモデルが驚くべき価格で取引されています。
カウンタックが後世に与えた影響は計り知れません。その斬新なウェッジシェイプ、V12ミッドシップのレイアウト、そして象徴的なシザードアは、後継モデルであるディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールへと受け継がれ、ランボルギーニのブランドイメージを決定づけました。
近年発表された限定モデル「カウンタック LPI 800-4」が、現代の技術で初代のデザインへのオマージュを捧げたことからも、その影響力が不変であることがわかります。
結論として、ランボルギーニ・カウンタックは、単に速い自動車や美しい工業製品という枠を超えた、一つの文化的なアイコンです。見る者の心を一瞬で掴むデザインと、五感を刺激するV12エンジンの咆哮は、これからも世代を超えて人々を魅了し続けるでしょう。まさに、スーパーカーという言葉が持つ本来の夢と憧れ、その全てを体現した一台、それがカウンタックなのです。
カウンタックLP400とLP500の違いを総括
ランボルギーニ・カウンタックの伝説は、現存しないプロトタイプLP500と、希少な初代市販モデルLP400との明確な違いから始まります。その後も約16年にわたり絶えず進化を続け、各モデルが独自のスペックと価値を持つことから、時代を超えて愛される永遠のスーパーカーとして知られています。
記事のポイントをまとめます。
- カウンタックは一台のプロトタイプから始まった伝説である
- LP500は1971年発表の現存しないコンセプトカー
- LP400は1974年登場の希少な初代市販モデル
- ワンオフのLP500は市販されず値段はつけられない
- LP400の現在の相場は1億円を超える価値を持つ
- 基本デザインはマルチェロ・ガンディーニが担当
- 約16年の生産期間で常に進化と改良が続いた
- LP400S初期型は希少な「ローボディ」と呼ばれる
- 特注車ウルフ・カウンタックがLP500Sの起源である
- 5000QVは4バルブ化で最強の455PSを発生
- 25thアニバーサリーは最多生産台数の最終モデル
- 歴代モデルで排気量やボディサイズは異なる
- 後方視界の悪さが「カウンタックリバース」を生んだ
- 斬新なデザインと性能は社会に衝撃を与えた
- 後継モデルに多大な影響を与えた永遠のスーパーカー