クラウンスポーツはパクリ?フェラーリとポルシェのデザインを比較

クラウンスポーツの画像
TOYOTA公式

トヨタから登場した新型クラウンスポーツの、これまでの国産車とは一線を画す流麗なデザインに、心を奪われた方も多いのではないでしょうか。しかし同時に、その姿がフェラーリやポルシェといった欧州の高級SUVに驚くほど似ていると感じたかもしれません。

インターネット上では、これはクラウンスポーツのパクリではないかという声が飛び交い、特にクラウンスポーツはポルシェのパクリだとする意見も少なくありません。果たしてプロサングエとクラウンはどっちが先に発表されたのか、またクラウンスポーツに似ている車種は他にも存在するのか、次々と疑問が湧いてくることでしょう。

この大きな話題の真相を探るためには、単なる見た目だけでなく、プロサングエとクラウンスポーツの比較を詳細に行い、両車のプロサングエとクラウンのデザイナーが込めた哲学まで読み解く必要があります。

さらに、実際のクラウンスポーツの評価はどうなのか、新旧のクラウンスポーツの価格、中古市場での動向、そして話題のクラウンスポーツ プロサングエ仕様カスタムとは一体何なのか、購入を検討する上で知りたい情報は多岐にわたります。

この記事では、そうした全ての疑問に一つずつ丁寧にお答えしていきます。デザインの類似性の真相から、この一台が持つ本当の価値まで、徹底的に掘り下げていきましょう。

記事のポイント
  • 発表時期の真相と開発プロセスの実情
  • 欧州高級SUVとのデザインの共通点と相違点
  • 安全性や空力がもたらすデザインの収斂
  • 噂とは別の実際の評価とリセール価値

クラウンスポーツのパクリ説。デザインの真相は

クラウンスポーツの画像
TOYOTA公式
  • 発表はプロサングエとクラウンのどっちが先か
  • プロサングエとのデザイン徹底比較
  • ポルシェ・マカンはパクリ元のモデル?
  • 他にもある?デザインが似ている車種
  • 両デザイナーのデザイン哲学と開発の裏側
  • カーデザインの模倣は法的に問題ないのか?

発表はプロサングエとクラウンのどっちが先か

トヨタのクラウンスポーツとフェラーリのプロサングエ、この両車が市場に登場した時期を見ると、公式な「公開」はクラウンスポーツがわずかに先行しています。しかし、この発表された順番だけで、どちらのデザインが先に考案されたかを判断するのは早計と言えます。自動車のデザイン開発は、非常に長い時間を要するプロセスだからです。

その理由は、一台の新型車が私たちの前に姿を現すまでには、一般的に3年から5年もの開発期間が必要とされるためです。デザインは車両開発の最も初期段階で行われるため、市場に公開される少なくとも3年前にはその骨格が固まっています。クラウンスポーツの初公開は2022年7月、一方でプロサングエの公式発表は同年9月でした。

このわずか2ヶ月の差は、数年にわたる開発期間全体から見ればごく僅かなものです。したがって、両メーカーのデザインチームは、互いの動向を知らないまま、ほぼ同時期にそれぞれの開発プロジェクトをスタートさせていた可能性が極めて高いのです。

具体的な発表の時系列を整理すると、以下のようになります。この流れを見ることで、単純な先後関係だけでは語れない、自動車開発の背景がより深く理解できるはずです。

イベント対象モデル時期備考
デザイン開発スタート(推定)両車2018年~2019年頃一般的な開発期間からの逆算
ワールドプレミア(初公開)トヨタ クラウンスポーツ2022年7月15日新型クラウンシリーズ4モデルの一つとして公開
公式発表フェラーリ プロサングエ2022年9月13日フェラーリ初の4ドアモデルとして発表
日本での発売(HEV)トヨタ クラウンスポーツ2023年11月ハイブリッドモデルが先行して発売

このように、どちらかが他方のデザインを見てから開発をスタートさせたとは時間的に考えにくいのが実情です。表面的な発表順に惑わされることなく、背景にある長い開発プロセスを考慮すれば、両車のデザインが似ている点は、むしろ現代のデザイントレンドが偶然重なった結果と捉えるのが自然な見方と言えるでしょう。

プロサングエとのデザイン徹底比較

フェラーリ・プロサングエの画像
Ferrari公式

クラウンスポーツとプロサングエは、一部で指摘されるデザインの類似点とは裏腹に、細部を比較すると両社のブランド哲学が色濃く反映された、全く異なる個性の車両であることがわかります。一見して似ていると感じる部分も、それぞれのメーカーが目指す方向性の違いから生まれた、似て非なるデザインなのです。

この違いが生まれる最大の理由は、両社のデザインコンセプトの根本的な相違にあります。フェラーリは、プロサングエを単なるSUVではなく、あくまで同社の伝統を受け継ぐ「スポーツカー」として開発しました。

そのため、デザインにはV12エンジンを搭載するための長いボンネットや、空力性能を追求した攻撃的なラインが随所に反映されています。

一方のトヨタは、クラウンスポーツを伝統ある「クラウン」ブランドの新たな挑戦と位置づけ、スポーティでありながらも、より多くの人々に受け入れられる流麗さとエレガンスをデザインの中心に据えました。

フロントデザインの比較

両車が似ていると言われる最大の要因は、おそらくフロントのヘッドライト形状でしょう。どちらもシャープな「コ」の字型のデイタイムランニングランプを採用しています。

しかし、プロサングエがグリルレスに近いデザインで大きな開口部を持つ一方、クラウンスポーツはトヨタの新世代デザインである「ハンマーヘッド」をモチーフとした、より抑制の効いたフロントマスクが特徴です。

ボディサイズとプロポーションの違い

車両の基本的な骨格であるボディサイズには、明確な違いが存在します。プロサングエは全長4,973mm、全幅2,028mmという堂々とした体躯を誇り、圧倒的な存在感を放ちます。

対するクラウンスポーツは全長4,720mm、全幅1,880mmと、特に全幅は148mmもスリムです。これは日本の道路事情にも配慮したサイズ選択と言えるでしょう。

項目クラウンスポーツ (HEV)フェラーリ プロサングエ差異
全長4,720 mm4,973 mm-253 mm
全幅1,880 mm2,028 mm-148 mm
全高1,565 mm1,589 mm-24 mm
ホイールベース2,770 mm3,018 mm-248 mm

内装デザインの方向性

内装に目を向けると、その差はさらに歴然となります。プロサングエの内装は、運転席と助手席を完全に対称に配置する「デュアルコクピット」思想に基づき、カーボンファイバーやアルカンターラといった高級素材を惜しみなく使用しています。

一方でクラウンスポーツの内装は、ドライバーが運転に集中できる非対称なレイアウトを採り、上質ながらも機能性を重視した、実用的な空間が広がっています。

これらの比較からわかるように、両車は目指す頂が異なる、全く別の個性を持ったモデルです。デザインの一部に共通のトレンドが見られたとしても、それを「パクリ」と結論付けるのは、各車両に込められたメーカーの深いこだわりを見過ごすことになってしまうでしょう。

ポルシェ・マカンはパクリ元のモデル?

ポルシェ・マカンの画像
PORSCHE公式

クラウンスポーツのデザインについて、フェラーリ・プロサングエと並んで頻繁に比較対象となるのが、ポルシェ・マカンです。しかし、これも意図的なデザインの模倣、いわゆる「パクリ」というよりは、開発目標の設定と、世界的なデザイントレンドが生んだ必然的な類似と考えるのが妥当です。

マカンとの類似性が多くのオンライン上の書き込みや質問で見られる理由は、主に3つ考えられます。

第一に、両車が「クーペSUV」という同じカテゴリーに属し、流麗なルーフラインを持つスポーティなシルエットを共有していること。

第二に、後述するように車両の基本寸法が驚くほど近いこと。

そして第三に、一部の自動車専門メディアが指摘するように、トヨタがクラウンスポーツを開発する上で、走行性能やデザインにおいて世界的なベンチマークであるマカンを強く意識した可能性が挙げられます。

数値で見るプロポーションの類似性

実際に両車の寸法を比較すると、その近さに驚かされます。特に全長やホイールベース、さらにはタイヤの外径に至るまで、まるで同じ骨格から作られたかのような近似値を示しています。これが、遠目から見た際のシルエットが似ていると感じさせる最大の要因になっています。

項目クラウンスポーツポルシェ マカン差異
全長4,720 mm4,726 mm-6 mm
全幅1,880 mm1,927 mm-47 mm
全高1,565 mm1,621 mm-56 mm
ホイールベース2,770 mm2,807 mm-37 mm

似て非なるデザイン要素

しかし、寸法が似ているからといって、デザインが同じわけではありません。細部を見れば、それぞれのブランドの個性が明確に表れています。例えばフロントのライト形状は、クラウンスポーツが鋭い切れ長のデザインであるのに対し、マカンはポルシェ伝統の丸みを帯びたティアドロップ形です。

また、リアデザインにおいても、クラウンスポーツがマフラーの存在感を消したクリーンな処理である一方、マカンは左右に大口径のマフラーエンドを配し、スポーティさを強調しています。実際に両車を見比べたオーナーや専門家からは、「写真では似ているが実物は全く違う」という回答が多く聞かれます。

結論として、クラウンスポーツがマカンを模倣したという見方は正確ではありません。むしろ、世界的に評価の高いマカンを「お手本」として徹底的に研究し、そこにトヨタ独自の解釈とデザイン哲学を加えて昇華させた結果、あのスタイルが生まれたと考えるべきでしょう。

これは、より良い自動車を市場に送り出すための、健全な開発プロセスの一環なのです。

他にもある?デザインが似ている車種

ランボルギーニ・ウルスの画像
Lamborghini公式

クラウンスポーツのデザインは、プロサングエやマカンだけでなく、他の欧州製高級SUV、特にランボルギーニ・ウルスとも部分的な類似性が指摘されることがあります。

しかし、これは特定の自動車を模倣したというよりも、現代の「スポーツSUV」というカテゴリー全体に共通するデザイントレンドを色濃く反映した結果と考えるのが自然です。

なぜなら、現在のグローバルな自動車市場において、スポーツSUVというジャンルには、顧客を惹きつけるためのいくつかの共通したデザイン上の「正解」が存在するからです。

例えば、地面に低く構えたワイドなスタンス、筋肉質に張り出したフェンダー、そして後方に向かってなだらかに下降するクーペのようなルーフラインなどがそれに当たります。

これらの要素は、走行性能の高さを視覚的に伝え、スタイリッシュな印象を与えるために多くのメーカーが採用しており、結果として異なるブランドのモデルであっても、全体の雰囲気が似てくる傾向にあるのです。

実際に、クラウンスポーツと他の高級SUVを比較すると、その共通点と相違点が見えてきます。

ランボルギーニ・ウルスとの比較

ウルスは、直線的で戦闘機を思わせる角張ったデザインが特徴であり、クラウンスポーツの流麗なラインとは細部の表現が大きく異なります。

しかし、SNSなどの書き込みでは、特に斜め後ろから見た際の、リアフェンダーの力強い膨らみや、車体全体の低く構えたプロポーションが「一瞬ウルスかと思った」という声が上がることがありました。これは、両車がスポーツ性能を強調する上で、同じような視覚的アプローチをとっていることを示唆しています。

ポルシェ・カイエンとの比較

直接的なライバルとはサイズが異なりますが、カイエンの名が挙がることもあります。これは、クラウンシリーズの第一弾として登場した「クロスオーバー」モデルが、ポルシェのパナメーラとカイエンを融合させたようなフォルムと評されたことに起因します。

つまり、新しいクラウンシリーズ全体が、従来の日本車のデザインから一線を画し、欧州の高級車、特にポルシェ的なデザイン言語を取り入れていると感じた人が多かったことの表れと言えるでしょう。

このように、クラウンスポーツが複数の高級SUVと似ている点は、決して模倣の証拠ではありません。むしろ、世界のトップブランドが競い合うデザインの最前線に、トヨタが真正面から挑み、同じ土俵で渡り合えるモデルを開発した証と捉えることができます。

これは、トヨタのデザイン開発力が新たなステージに進んだことを示す、興味深い現象なのです。

両デザイナーのデザイン哲学と開発の裏側

クラウンスポーツとプロサングエのデザインが似ているように見えるのは、両車のデザイナーがそれぞれ異なる頂を目指しながらも、「人々が直感的に美しいと感じる造形」を追求した結果、偶然にも一部の表現が交差したからに他なりません。その根底にあるデザイン哲学や、開発で目指したゴールは全く異なっています。

トヨタのデザイン哲学:普遍的なカッコよさの追求

クラウンスポーツのデザインを主導したトヨタのデザイナーは、開発にあたり「タイヤは大きい方がいい」「ホイールベースは短めがいい」といった、誰もが直感的にカッコいいと感じるであろう造形の普遍的な要件を突き詰めたと語っています。

これは、特定のモデルを模倣するのではなく、基本に立ち返って理想のプロポーションを追求した結果、あのスタイルが生まれたことを意味します。また、開発チームには「クラウン」という日本の自動車史を象徴するブランドを、世界に通用する革新的なモデルへと生まれ変わらせるという大きな使命がありました。

伝統を打ち破り、新しい時代のクラウン像を市場に提示することが、デザインにおける最大の目標だったのです。

フェラーリのデザイン哲学:血統の継承と機能美

一方、フェラーリにとってプロサングエの開発は、全く異なる挑戦でした。その名はイタリア語で「血統」を意味し、デザインにおける至上命題は、フェラーリが75年以上にわたって築き上げてきたスポーツカーのDNAを、いかに4ドア4シーターという新しい形で表現するか、という点にありました。

フロントに搭載された巨大なV12エンジンの存在感をいかに美しく見せるか、高速走行時の空気をどう整えるか。すべてのデザインラインは、パフォーマンスという機能に従属しています。

例えば、特徴的な観音開きのドア「ウェルカムドア」も、単なる奇抜なアイデアではなく、後席へのスムーズなアクセスを確保しつつ、クーペのような美しいサイドシルエットを維持するための、機能美を追求した選択なのです。

このように、クラウンスポーツが「スタイルの革新」を目指したのに対し、プロサングエは「血統の継承」を目指してデザインされました。両車のデザインは、それぞれのデザイナーが全く異なる出発点から最高のものを追求した情熱の結晶であり、そのアプローチの違いこそが、各モデルの揺るぎない個性を形作っています。

表面的な形の類似性だけで判断せず、そのデザインに込められた物語を読み解くことで、自動車の持つ本来の魅力がより深く見えてくるはずです。

カーデザインの模倣は法的に問題ないのか?

カーデザインの模倣は法的に問題ないのか?
スポカーラボ・イメージ

自動車のデザインが似ているという話題は、しばしば「パクリ」や「模倣」といった言葉と共に語られますが、法的な観点から見ると、これを「違法」と断じることは極めて難しいのが実情です。

デザインを保護する法律は存在しますが、その適用範囲は限定的であり、自動車全体のスタイルが似ているというだけでは、法的な問題に発展するケースはほとんどありません。

その主な理由は、デザインを保護する「意匠法」の特性にあります。意匠権は、これまでにない新しい(新規性)かつ、容易に思いつけない独創的な(創作性)工業製品のデザインに対して与えられる権利です。

しかし、この権利が保護するのは、例えばヘッドライトの具体的な形状や、フロントグリルの独特な模様といった、明確に特定できる部分的なデザインが主となります。全体のシルエットや、クーペSUVといった車両のスタイルそのもの、いわゆる「作風」や「コンセプト」までを一つの権利で独占することは、原則として認められていません。

そのため、全体の雰囲気が似ていても、細部のデザインが異なっていれば、意匠権の侵害には当たらないと判断されることが大半です。

また、仮に訴訟になったとしても、デザインを意図的に模倣したことを立証するのは非常に困難です。「世界のデザイントレンドを研究した結果、偶然似てしまった」「空力性能や安全基準といった技術的な要件を追求したら、必然的に似た形になった」といった反論が十分に成り立ちます。

実際に、日本の意匠法では、登録されたデザインは最長25年間保護されます(出典:特許庁「意匠制度の概要」)。

しかし、過去には海外メーカーが他社のデザインを明らかに模倣したと思われるケースでも、訴訟で模倣と認定されることは稀でした。これは、前述の通り、法的な立証が難しいことに加え、国ごとに法律や制度が異なることも影響しています。

もちろん、法的な問題をクリアすれば何をしても良いというわけではありません。露骨な模倣は、メーカーとしての独創性を疑われ、ブランドイメージを著しく傷つけるリスクを伴います。

今回のクラウンスポーツのケースは、このような法的な問題を議論するレベルの模倣ではなく、グローバル市場における健全な競争の中で生まれたデザインと見るべきでしょう。最終的にそのデザインの価値を判断するのは、法律ではなく、市場であり、私たち消費者一人ひとりなのです。

クラウンスポーツのパクリ説を超えた人気の理由

クラウンスポーツの画像
TOYOTA公式
  • オーナーや専門家による実際の評価
  • 新車価格と中古市場でのリセール価値
  • 結局どっち?プロサングエとの購入比較ポイント
  • プロサングエ仕様カスタムの人気と内容
  • なぜ似る?SUVデザインのトレンドと収斂現象

オーナーや専門家による実際の評価

クラウンスポーツは、その斬新なデザインによって市場から非常に高い注目を集める一方、実際の使い勝手や走行性能については、オーナーや専門家の間で評価が分かれています。これは、このモデルが従来のクラウンのイメージを大きく覆す、挑戦的な一台であることの裏返しとも言えるでしょう。

評価が分かれる背景には、この自動車が持つ二面性があります。デザインや乗り心地といった感性的な部分では高い評価を得ていますが、室内空間の広さなど実用的な面では、ライフスタイルによって意見が割れる傾向にあります。

特に、長年クラウンを乗り継いできたユーザーと、このモデルで初めてクラウンに興味を持った新しい顧客層とでは、評価の視点が異なるようです。

デザインや走行性能に関する満足点

多くのオーナーから寄せられる声として、まず挙げられるのがエクステリアデザインへの賛辞です。「SUVの中で最もスタイリッシュ」「どの角度から見ても飽きない」といった書き込みが、各種レビューサイトやSNSで頻繁に見られます。

また、見た目のスポーティな印象に反して、乗り心地が非常にしなやかで静粛性が高い点も高く評価されています。21インチの大径タイヤを装着しているにもかかわらず、路面からの不快な衝撃を巧みにいなし、長距離の移動でも疲れにくいという回答は、このモデルの隠れた美点と言えるでしょう。

実用性やパワーに関する不満点

一方で、厳しい意見が見られるのが実用性の部分です。特に後部座席や荷室のスペースについては、「大人が長時間乗るには窮屈」「ゴルフバッグを積むのに工夫が必要」など、そのスタイリッシュなデザインと引き換えに、空間的な制約があることを指摘する声が少なくありません。

また、「スポーツ」という名称から期待されるほどの爆発的な加速感はなく、動力性能はあくまで実用的でスムーズなハイブリッド(HEV)の範囲内である、と感じるユーザーもいるようです。

専門家の間では、デザインの類似性は現代の自動車開発における「トレンドの収斂」であり、安易に模倣と断じるべきではないという見方が主流です。トヨタが伝統あるクラウンという名前を使って、これほど大胆な変革に挑んだこと自体を評価する声が多く聞かれます。

結局のところ、クラウンスポーツは、後部座席の使用頻度が低く、何よりもデザインと運転の楽しさを重視するユーザーにとっては、この上なく魅力的な一台です。しかし、家族での利用や多くの荷物を積む機会が多い方にとっては、購入前に実用面を慎重に確認する必要がある、評価の分かれるモデルと言えるでしょう。

新車価格と中古市場でのリセール価値

新車価格と中古市場でのリセール価値
スポカーラボ・イメージ

クラウンスポーツは、新車価格が590万円からと高級SUVのカテゴリーに属しますが、その充実した装備や内外装の質感を考慮すると、非常に競争力のある価格設定と言えます。さらに注目すべきは、発売から時間が経過した現在の中古車市場においても、極めて高い資産価値、いわゆるリセールバリューを維持している点です。

高い価値が維持される理由は、複合的な要因によるものです。まず、その斬新なデザインが市場に熱狂的に受け入れられ、発売当初から需要が供給を大幅に上回る状況が続いています。この根強い人気が、中古車価格を高値で安定させる最大の推進力となっています。

加えて、長年にわたって培われてきたトヨタ、そして「クラウン」というブランドへの絶大な信頼性が、将来的な価値を担保しています。燃費性能に優れたハイブリッドシステム(HEV)を搭載していることも、維持費を気にするユーザーにとって大きな魅力となり、中古市場での需要を支えています。

グレード別新車価格

現在、クラウンスポーツの新車ラインナップは、主に2つのパワートレインで構成されています。それぞれの価格は以下の通りです。

パワートレイングレードメーカー希望小売価格(税込)
2.5L ハイブリッド(HEV)SPORT Z5,900,000円
2.5L プラグインハイブリッド(PHEV)SPORT RS7,650,000円

現在の中古車市場の動向(2025年9月時点)

中古車市場に目を向けると、クラウンスポーツの価値の高さが一層際立ちます。走行距離が数千km程度の、いわゆる「低走行車」や登録済み未使用車と呼ばれる車両は、新車価格とほぼ同等か、人気のオプション装備が付いている場合には新車価格を上回るプレミア価格で取引されることも珍しくありません。

一般的な中古車であっても、年式や走行距離の割に価格が下がりにくい傾向が続いています。もし自身の愛車の価値を知りたい場合は、一度オンラインの一括査定サービスなどを利用してみるのも良いでしょう。

このように、クラウンスポーツは購入時の満足度だけでなく、将来的に手放す際の経済的なメリットも大きい、非常に資産価値の高い自動車です。初期投資は決して安価ではありませんが、その価値は長期間にわたって維持される可能性が高く、長期的な視点で見れば賢明な選択となり得るでしょう。

結局どっち?プロサングエとの購入比較ポイント

クラウンスポーツとフェラーリ・プロサングエは、購入を検討する上で同じ土俵で比較されるモデルではありません。デザインの一部に共通のトレンドが見られることは事実ですが、その価格、性能、そして車両が持つ意味合いは、全く異次元のレベルにあります。

したがって、どちらを選ぶかという問いの答えは、自分が自動車に対して何を求めるのかという、自身の価値観とライフスタイルを深く見つめ直すことでしか見えてきません。

両車を隔てる最も決定的な違いは、その価格帯とコンセプトです。クラウンスポーツが約590万円から手に入るトヨタの先進的な高級SUVであるのに対し、プロサングエは約5,000万円という価格に加え、厳しい購入条件をクリアした限られたオーナーだけが所有を許される、フェラーリの血統を受け継ぐスーパーカーです。

年間維持費も、数十万円で収まるであろうクラウンスポーツに対し、プロサングエは文字通り桁違いの数百万円単位が必要となります。

ライフスタイル別 選択ガイド

この2台の選択は、どちらの自動車が優れているかという議論ではなく、どちらのライフスタイルを選ぶかという選択に他なりません。以下の表は、それぞれのモデルがどのような価値観を持つユーザーに適しているかを示したものです。

比較ポイントクラウンスポーツフェラーリ プロサングエ
重視する価値観デザイン、信頼性、経済性圧倒的性能、希少性、ステータス
車両価格の目安約590万円 ~ 765万円約5,000万円 ~ (オプション除く)
年間維持費の目安数十万円数百万円以上
主な利用シーン日常使い、通勤、週末のドライブ特別な日のドライブ、コレクション
エンジン2.5L ハイブリッド(HEV/PHEV)6.5L V型12気筒 自然吸気
得られる価値先進性と所有する満足感唯一無二の体験と究極の所有欲

言ってしまえば、この2台を比較することは、高級ホテルのスイートルームと、購入したプライベートな古城を比べるようなものです。どちらも素晴らしい体験を提供してくれますが、その意味合いも必要な覚悟も全く異なります。日常の中で先進的なデザインと快適な走りを求めるのであれば、クラウンスポーツは最高の選択肢の一つです。

一方で、自動車という存在そのものに、非日常的な興奮と究極のステータスを求めるのであれば、その先にはプロサングエという世界が待っているのです。

プロサングエ仕様カスタムの人気と内容

プロサングエ仕様カスタムの人気と内容
K-FACTORY公式

クラウンスポーツのデザインがプロサングエと似ているという話題性は、一部の熱心なオーナーやカスタムショップの間で、その雰囲気をさらに昇華させる「プロサングエ仕様」カスタムという新たな潮流を生み出しました。

これは、単なる模倣という言葉では片付けられない、クラウンスポーツが秘めるデザインポテンシャルの高さを証明する興味深い現象と言えます。

このようなカスタムが人気を集める背景には、いくつかの理由があります。最大の魅力は、数千万円という価格と厳しい購入条件から、所有することが極めて困難なプロサングエの世界観を、より現実的な形で自身の愛車に反映できる点にあります。

また、クラウンスポーツは元々のデザインの親和性が高いため、フロントバンパーやリアディフューザーといった一部のエアロパーツを交換するだけでも、車両全体の印象を劇的に、かつスタイリッシュに変化させることが可能です。

実際に、カスタムカーの祭典である東京オートサロンなどのイベントで完成度の高い車両が展示され、専門家や来場者から高い評価を受けたことも、その人気に拍車をかけています。

有名な「AERO OVER」製ボディキット

この「プロサングエ仕様」カスタムを象徴する存在が、カスタムブランド「AERO OVER」を手がけるK-FACTORYが製作したモデルです。この車両は「東京オートサロン2025」に出展され、数ある出展車両の中からドレスアップ・SUV部門で優秀賞を受賞しました。

単に形を似せるだけでなく、クラウンスポーツのデザインを尊重しつつ、プロサングエへの敬意を込めて細部まで作り込まれているのが特徴です。

カスタム内容の詳細

具体的なカスタム内容は、主にエクステリアパーツの装着が中心となりますが、その一つ一つが車両の印象を大きく左右します。

パーツ名主なカスタム内容期待される効果
フロントハーフスポイラープロサングエ風の大型開口部を持つデザインに変更フロントフェイスに攻撃的でワイドな印象をプラス
リアディフューザー立体的な造形とフィンを持つデザインに変更リアビューの迫力と空力性能の向上を視覚的に演出
車検対応左右出しマフラー純正の隠されたマフラーから、存在感のあるマフラーエンドに変更見た目のスポーティさを大幅に向上
サスペンションキット適度に車高を下げるローダウンスプリングなどを装着より低く構えた、安定感のあるスタンスを実現
内装(フロアマットなど)KARO製のフロアマットなどで内装の質感を向上エクステリアに負けない高級感を演出

結局のところ、「プロサングエ仕様」カスタムは、クラウンスポーツという優れたデザインを持つ車両をベースに、オーナーが自身の理想のスタイルを追求する、創造的なカーライフの楽しみ方の一つです。

このようなカスタム文化が生まれること自体が、クラウンスポーツというモデルの持つ魅力と、それを受け入れる懐の深さを何よりも雄弁に物語っているのです。

なぜ似る?SUVデザインのトレンドと収斂現象

クラウンスポーツをはじめとする多くのSUVのデザインが、特定の高級車と似ていると指摘される根本的な理由は、単一のメーカーが他社を模倣しているからではありません。

むしろ、現代の自動車開発を取り巻く様々な制約や市場からの要求が、結果的にデザインを似た方向へと導いてしまう「収斂(しゅうれん)現象」が大きく影響しています。

デザインの収斂が起こる背景には、大きく分けて3つの要因が存在します。

一つ目は、どの自動車メーカーも等しくクリアしなければならない「技術的・法的な制約」です。

例えば、年々厳しくなる衝突安全基準を満たすための骨格構造や、歩行者を保護するためのボンネットの高さ、そして燃費を向上させるための空力性能の追求などは、デザインの自由度を大きく制限します。これらの共通課題に対して最適な答えを求めると、おのずと車両の基本的なシルエットや寸法は似通ってくるのです。

二つ目の要因は、「市場のトレンドと顧客の要求」です。

現在のグローバル市場では、多くの顧客がSUVに対して「スポーティで高級感がある」という共通のイメージを抱いています。

メーカーが販売台数を最大化するためには、この最大公約数的な要求に応える必要があり、結果としてクーペのようなルーフラインや大径タイヤ、存在感のあるフロントマスクといった、流行のデザイン要素が多くのモデルで採用されることになります。

そして三つ目は、「開発プロセスの同質化」です。

かつては各社のデザイナーが紙の上でスケッチを描き、手作業で粘土模型(クレイモデル)を製作していましたが、現在では高性能なコンピュータ支援設計(CAD)やシミュレーション技術の活用が一般的です。

同じようなツールを用いて、同じような制約の中で最適な形状を求めれば、異なるメーカーであっても、最終的に導き出されるデザインの答えが似てくるのは、ある意味で必然と言えるでしょう。

この収斂現象は、自動車業界に限った話ではありません。例えば、私たちの身近にあるスマートフォンのデザインを思い浮かべてみてください。登場した当初は様々な形がありましたが、現在ではどのメーカーの製品も、薄い一枚の板のような形状に収斂しています。

これは、より大きな画面で見やすく、操作しやすいものが欲しいというユーザーの要求と、それを実現する技術がもたらした、ごく自然な進化の結果なのです。

したがって、一部のSUVのデザインが似てしまうのは、現代の自動車開発において、ある程度は避けられない側面を持っています。

本当に注目すべきは、その共通化された枠組みの中で、各メーカーがいかにして自社のブランド哲学や独創性を、グリルやライトの細かな造形、ボディのプレスラインといった「ディテール」に込めているかという点です。

この収斂という現象を理解することで、私たちは表面的な類似性に惑わされることなく、より深い視点でカーデザインの面白さや価値を評価できるようになるはずです。

クラウンスポーツはパクリではない!総括

ここまで様々な角度から検証してきた通り、クラウンスポーツにまつわる「パクリ説」は、あくまで表面的なデザインの類似性だけを捉えた一面的な見方です。

実際には、開発の背景や両社のブランド哲学、そして市場からの客観的な評価に至るまで、あらゆる面でプロサングエとは一線を画す、独自の魅力を確立した人気の国産SUVであると結論付けることができます。

この結論に至る根拠は、本記事で解説してきた以下のポイントに集約されます。

  • 両車の開発期間を考慮すると、発表時期が近いことから、一方が他方を意図的に模倣することは時間的に不可能であったこと。
  • デザインの細部やコンセプトを比較すると、トヨタの「革新」とフェラーリの「血統」という、全く異なるデザイン哲学が明確に反映されていること。
  • ポルシェ・マカンとは、あくまで開発におけるベンチマークとしての関係性であり、模倣とは次元の異なるものであること。
  • 類似性の背景には、法的な問題ではなく、安全性や空力性能がデザインを似通わせる「収斂現象」という、現代の自動車開発に共通する事情があること。
  • そして何より、実際のオーナーからはデザインや走行性能を高く評価する声が多く、中古車市場でも高い価値を維持し続けているという客観的な事実があること。

噂や第一印象だけでその価値を判断してしまうのは、非常にもったいないことです。もし少しでもこのユニークな国産SUVに興味を持たれたなら、ぜひ一度ご自身の目で実車に触れ、そのデザインに込められた情熱や、走り出した瞬間に伝わってくる上質な乗り心地を体感してみてください。

きっと、インターネット上の評価だけでは決して分からない、この自動車が持つ本当の価値を見出すことができるはずです。

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