
日産の歴史を彩るスカイラインの中でも、特に多くのファンを魅了し続ける2つの伝説的なモデルがあります。それが、ハコスカとケンメリです。この2台のスカイラインの基本的な違いから、少しマニアックなポイントまで、気になっている方も多いのではないでしょうか。
そもそも、どっちが古いのか、それぞれの愛称の由来は何なのか。また、発売当時はどっちが人気で、現在の中古車市場では値段はどっちが高いのかは、多くの人が関心を寄せる点です。
さらにこの記事では、伝説のグレードであるGTRの物語、ヨンメリというバリエーションの存在、そして、なぜケンメリが少ない理由があるのかについても深掘りします。加えて、その後のモデルであるジャパンや鉄仮面との関係性にも触れながら、ハコスカとケンメリの違いを多角的に解説し、全ての疑問に答えていきます。
- 世代、愛称の由来といった基本的な背景
- 箱型と流線形という対照的なボディデザイン
- 栄光と悲運に分かれたGTRの対照的な物語
- 販売台数や現在の中古車価格とその理由
ハコスカとケンメリの違いとは?基本情報と歴史を比較

- ハコスカとケンメリ、どっちが古い?
- 「ハコスカ」「ケンメリ」愛称の由来
- 見た目の違いは箱型と流線形ボディ
- 「ヨンメリ」とケンメリの違いはドアの数
- なぜ?ケンメリGT-Rが少ない理由
- ジャパンや鉄仮面との違いも解説
ハコスカとケンメリ、どっちが古い?
旧車の世界で輝かしい歴史を持つ日産のスカイラインですが、「ハコスカ」と「ケンメリ」のどちらが古いモデルなのかという質問はよく聞かれます。結論から言うと、ハコスカの方が古いモデルです。ハコスカは3代目のスカイライン、そしてケンメリはその次に発売された4代目のモデルにあたります。
その理由は、スカイラインというクルマが持つ長い歴史の系譜にあります。もともとはプリンス自動車が開発したモデルでしたが、日産自動車との合併を経て、その魂は受け継がれました。ハコスカは、日産として新たなスタートを切った後のスカイラインとして登場し、その人気を不動のものにしたのです。
具体的にそれぞれの発売期間を見てみると、その順番はより明確になります。
項目 | ハコスカ | ケンメリ |
---|---|---|
世代 | 3代目 スカイライン | 4代目 スカイライン |
型式 | C10型 | C110型 |
発売期間 | 1968年~1972年 | 1972年~1977年 |
簡単な特徴 | 箱型の無骨なデザイン | 流線形のボディとCMの人気 |
このように、ハコスカが販売を終えた1972年に、後継モデルとしてケンメリが発売されました。つまり、この2台のクルマは先代と後継という直接的な関係にあるわけです。
歴代スカイラインの中でも特にこの2つのモデルが混同されやすいのは、どちらも圧倒的な人気を誇り、旧車ファンの間で特別な存在として語り継がれているからでしょう。ハコスカが築いたスカイラインのブランドイメージを、ケンメリがさらに大衆的な人気へと昇華させたと考えると、その歴史的背景も理解しやすくなるかもしれません。
「ハコスカ」「ケンメリ」愛称の由来

スカイラインの歴史を語る上で欠かせないのが、それぞれのモデルに付けられた親しみやすい愛称です。中でも「ハコスカ」と「ケンメリ」は特に有名ですが、これらの愛称がどのようにして生まれたのか、その由来には大きな違いがあります。
まずハコスカですが、この愛称はクルマの見た目が直接的な由来となっています。その名の通り「箱のような角ばったスカイライン」を短く略して「ハコスカ」と呼ばれるようになりました。当時のレースシーンでは、市販車をベースにしたレーシングカーを「箱車(はこしゃ)」と呼ぶことがあり、レースでの活躍もこの愛称が定着する一因になったと言われています。
ちなみに、登場当時はCMのキャッチコピーから「愛のスカイライン」、略して「愛スカ」と呼ばれることもありました。しかし、後継モデルであるケンメリの登場によって、区別のために「ハコスカ」という呼び方が広く浸透していったのです。
一方でケンメリの愛称は、クルマの性能や形ではなく、テレビCMから生まれたという非常に珍しいケースです。当時、日産は「ケンとメリーのスカイライン」というキャッチコピーで、若い男女のカップル「ケン」と「メリー」がスカイラインに乗って日本中を旅するというシリーズCMを展開しました。
このキャンペーンが大成功し、クルマそのものだけでなく、CMソングやロゴTシャツといった関連グッズも爆発的にヒットする社会現象を巻き起こしたのです。この国民的な人気から、いつしか「ケンとメリーのスカイライン」は「ケンメリ」と略され、クルマの愛称として完全に定着しました。北海道美瑛町にあるCMのロケ地となったポプラの木は、今でも「ケンとメリーの木」として多くの観光客が訪れる名所になっています。
このように考えると、ハコスカはクルマ本来の持つ無骨なスタイルから、ケンメリは巧みな広告戦略によって、それぞれの愛称が生まれました。どちらも多くの人々に愛されたからこそ、今なお色褪せない魅力的な呼び名として残り続けているのでしょう。
見た目の違いは箱型と流線形ボディ

ハコスカとケンメリは、一目見れば誰もがその違いを認識できるほど、対照的なボディデザインを持っています。この2つのモデルの最大の違いは、ハコスカが直線的で角張った「箱型」のデザインであるのに対し、ケンメリは全体的に丸みを帯びた滑らかな「流線形」のスタイルを採用している点です。
ハコスカのデザインは、エッジの効いたシャープなプレスラインが特徴で、特にリアフェンダーに見られる「サーフィンライン」は、その象徴ともいえます。全体的に無骨で力強い印象を与え、見る者に「走り」を予感させるスパルタンな雰囲気が漂っています。フロントマスクからボディサイド、リアに至るまで、直線基調で構成されたフォルムは、まさに「ハコスカ」の愛称がぴったりなデザインです。
これに対してケンメリは、ハコスカの基本的な骨格を受け継ぎながらも、デザインの方向性を大きく変えました。ボディ全体の角が取れ、より滑らかで優雅なシルエットへと進化しています。特に印象的なのは、ルーフからリアエンドにかけてなだらかに傾斜するファストバックスタイルのデザインです。
この流麗なラインは、ハコスカの持つ硬派なイメージとは異なり、スタイリッシュでどこか妖艶な魅力を感じさせます。また、スカイラインの伝統として後に定着する「丸型4灯テールランプ」が本格的に採用されたのはこのケンメリからです。
デザイン項目 | ハコスカ (C10型) | ケンメリ (C110型) |
---|---|---|
全体的な印象 | 直線的で角張っている | 丸みを帯びて滑らか |
ボディ形状 | 箱型 (ノッチバック) | 流線形 (ファストバック) |
サーフィンライン | 明確でエッジが立っている | 緩やかでボディに溶け込む |
テールランプ | グレードにより異なる (丸型はGT-R等) | 丸型4灯が象徴となる |
Cピラーの形状 | 角度が立っている | なだらかに傾斜している |
このように、2つのモデルを比較すると、デザインコンセプトに明確な違いがあることがわかります。ハコスカがレースシーンを意識した機能美を追求したデザインだとすれば、ケンメリはより幅広い層にアピールするための時代の流行を取り入れたデザインと言えるでしょう。どちらのデザインもそれぞれの時代の空気感を色濃く反映しており、甲乙つけがたい魅力を持っています。
「ヨンメリ」とケンメリの違いはドアの数
ケンメリのバリエーションについて調べていると、「ヨンメリ」という言葉を目にすることがあります。この「ヨンメリ」と「ケンメリ」の最も大きな違いは、その名の通りボディのドア枚数です。一般的に「ケンメリ」と言えば2ドアハードトップモデルを指し、「ヨンメリ」は4ドアセダンモデルを指す愛称として使われています。
もともと4代目スカイラインには、クーペスタイルの2ドアハードトップの他に、ファミリーユースも想定した4ドアセダン、さらにワゴンやバンといった多彩なボディラインナップが存在しました。
その中で、4ドアセダンを区別するために生まれたのが「4枚ドアのケンメリ」を略した「ヨンメリ」という呼び方です。一説には、この呼び方はカスタムを楽しむユーザー層から自然発生的に広まったと言われています。
2000年代に入り旧車の人気が高まると、2ドアのケンメリ、特にGT-R仕様に改造されたモデルの中古車価格は急激に高騰しました。一方で、4ドアのヨンメリは比較的リーズナブルな価格で手に入れることができたため、カスタムベースの車両として注目を集めたという背景があります。もちろん現在では、ヨンメリも希少な旧車として価値が上がり、決して安価な存在ではありません。
デザイン面でも、単にドアの枚数が違うだけではありません。2ドアのケンメリが流麗なファストバックスタイルを特徴としているのに対し、ヨンメリはセダンとしてより実用的で落ち着いたシルエットを持っています。
リアのドアが追加されたことに伴い、Cピラーの形状やルーフからトランクにかけてのラインも専用の設計となっており、それぞれに異なる魅力があります。流麗なスタイルを愛するならケンメリ、箱型のスカイラインの面影を残す実用的なスタイルを好むならヨンメリ、という選択ができるのもこの世代の面白さです。
なぜ?ケンメリGT-Rが少ない理由
スカイラインの歴代モデルの中でも、「ケンメリGT-R(KPGC110型)」は突出して生産台数が少なく、極めて希少な存在として知られています。
その生産台数はわずか197台(市販は195台とも)と言われており、この数字が「幻のGT-R」と呼ばれる所以です。では、なぜこれほどまでに生産台数が少なかったのでしょうか。その最大の理由は、発売からわずか4ヶ月後に施行された、当時の厳しい「排出ガス規制」の壁を越えられなかったためです。
1973年、ケンメリGT-Rは先代ハコスカGT-Rの栄光を受け継ぎ、大きな期待を背負って登場しました。しかし、当時の自動車業界は環境問題への対応を迫られる大きな転換期にありました。ケンメリGT-Rに搭載されていたS20型エンジンは、レースで輝かしい実績を残した名機ではありましたが、新たに設けられた排ガス基準をクリアすることが技術的に困難だったのです。
もちろん、日産の技術者たちも手をこまねいていたわけではありません。規制に対応するための新たなエンジンを開発するには莫大な費用と時間が必要となり、オイルショックという社会情勢も重なった結果、日産はGT-Rの生産を継続するという判断を下せませんでした。これにより、ケンメリGT-Rは1973年1月の発売からわずか4ヶ月で生産中止という、非常に短い生涯を終えることになったのです。
一部では「ハコスカGT-Rで余った部品を流用して作られた」という説も囁かれますが、これは正確ではありません。実際には、ボディに合わせた専用のオーバーフェンダーやリアスポイラーが新設計されたほか、S20型エンジン自体もケンメリ用にセッティングが見直されるなど、限られた条件の中でGT-Rとしてふさわしい進化を遂げていました。
しかし、そのポテンシャルをレースシーンで発揮する機会は与えられず、ケンメリGT-Rはサーキットに登場しなかった唯一のGT-Rとして、その歴史に名を刻んでいます。この悲運のストーリーと圧倒的な希少性が、今なお多くのファンを惹きつけ、異常とも言える中古車相場を形成する要因となっているのです。
ジャパンや鉄仮面との違いも解説

ケンメリ以降もスカイラインの歴史は続き、ファンから愛される数々のモデルが登場しました。中でも、ケンメリの次に発売された「ジャパン」、さらにその次の世代である「鉄仮面」は、それぞれが時代を象徴する個性的なクルマです。ここでは、ケンメリとこれらの後継モデルとの違いを解説します。
項目 | ケンメリ | ジャパン | 鉄仮面 |
---|---|---|---|
世代 | 4代目 | 5代目 | 6代目 (後期型) |
型式 | C110型 | C210型 | R30型 |
発売期間 | 1972年~1977年 | 1977年~1981年 | 1983年~1985年 |
愛称の由来 | CMの登場人物から | CMキャッチコピーから | フロントマスクの見た目から |
デザインの特徴 | 流線形のボディ | サーフィンラインを強調 | グリルレスの薄型ヘッドライト |
エンジンの特徴 | L型エンジン / S20型(GT-R) | L型エンジン / 後期にターボ追加 | FJ20型DOHCエンジン搭載 |
まず、ケンメリの後継として1977年に登場したのが5代目スカイライン、通称「ジャパン」です。この愛称は「SKYLINE JAPAN」という広告キャンペーンに由来します。デザインはケンメリのイメージを受け継ぎつつ、より直線的でシャープな印象になりました。
しかし、このモデルは排ガス規制の影響を最も色濃く受けた世代であり、発売当初は牙を抜かれた「名ばかりのGT」と揶揄されることもありました。しかし、その逆境に応えるように、後期モデルでは待望のターボエンジンが追加され、スカイラインの走りのイメージを再び取り戻し始めます。
そして、1981年に登場した6代目R30型スカイラインの後期モデル(1983年~)が、通称「鉄仮面」です。ラジエーターグリルを廃した独特のフロントマスクと、薄型のヘッドライトが騎士の鉄仮面を彷彿とさせることからこの愛称が付きました。
このモデルの最大の功績は、高性能なDOHC4バルブエンジン「FJ20型」を搭載した「RS」グレードの登場です。GT-Rこそ名乗らなかったものの、「史上最強のスカイライン」と呼ばれ、ケンメリ以来途絶えていたスカイラインのスポーツイメージを完全に復活させた重要なモデルとなりました。
このように、ケンメリ、ジャパン、鉄仮面は、それぞれが排ガス規制という厳しい時代の中で、スカイラインらしさを模索し続けた歴史の証明と言えるでしょう。各モデルのデザインや性能の違いを知ることで、スカイラインというクルマが持つ物語の深さをより一層感じることができます。
ハコスカとケンメリの違いは人気や価格にも?GTRも解説

- 販売台数で見る!結局どっちが人気?
- 値段はどっちが高い?現在のリセール相場
- 伝説のグレード、ハコスカとケンメリのGTR
- ハコスカ・ケンメリ・ジャパンの中古車事情
- ユーザーからの評価や感想レビュー
販売台数で見る!結局どっちが人気?
ハコスカとケンメリ、どちらも旧車として絶大な人気を誇りますが、「発売当時に、より多くの人に受け入れられたのはどちらか?」という視点で見た場合、その答えは明確です。販売台数という客観的な数字で比較すると、ケンメリがハコスカを大きく上回り、圧倒的な人気を獲得していました。
具体的な数字を挙げると、ハコスカの総販売台数が約31万台であったのに対し、ケンメリは約67万台という驚異的なセールスを記録しています。これはハコスカの2倍以上であり、現在に至るまで歴代スカイラインの中で最多販売台数の記録として燦然と輝いています。
では、なぜこれほどの差がついたのでしょうか。前述の通り、その最大の要因は巧みなCM戦略にあります。硬派で走り屋のイメージが強かったハコスカに対し、ケンメリは「ケンとメリー」のカップルを起用することで、クルマをファッションやライフスタイルの一部として捉える新しい価値観を提案しました。この戦略が当時の若者層やファミリー層の心を見事に掴み、これまでスカイラインに興味のなかった層まで取り込むことに成功したのです。
もちろん、これは現在の人気がケンメリに劣るという意味ではありません。現代の旧車市場においては、レースでの輝かしい功績を持つハコスカを支持する声も非常に多く、その人気は甲乙つけがたいものがあります。しかし、発売当時に社会現象を巻き起こし、より多くの人々の生活に溶け込んだという点においては、間違いなくケンメリに軍配が上がると言えるでしょう。
値段はどっちが高い?現在のリセール相場

ハコスカとケンメリのどちらを購入しようかと考えたとき、最も気になるのが現在の値段、つまりリセール相場ではないでしょうか。結論から言えば、どちらのモデルも一般的な中古車の価格帯をはるかに超えるプレミアム価格で取引されていますが、全体的な傾向としては希少性の高いケンメリの方が高値になることが多いです。
この2台の価格は、まさに天井知らずといった状況です。例えば、標準的なグレードであっても、ハコスカは400万円から600万円、ケンメリはそれを上回る600万円以上が中心価格帯となっています。もちろん、これはあくまで最低ラインの目安であり、車両の状態やレストアの質によっては、どちらも1,000万円を超える個体は珍しくありません。
特に価格を大きく左右するのが、最上級グレードである「GT-R」の存在です。
グレード | ハコスカ | ケンメリ |
---|---|---|
標準グレード (GTなど) | 400万円~ | 600万円~ |
GT-R仕様 (改造車) | 1,000万円前後~ | 1,200万円前後~ |
本物のGT-R | 2,000万円~ (応談) | 5,000万円~ (応談) |
過去のオークション最高値 | 4,000万円以上 | 5,000万円以上 |
表を見てわかる通り、特にケンメリGT-Rは生産台数が極端に少ないため、市場に出てくること自体が稀であり、その価格はまさに「時価」と言えます。不動車であっても驚くような価格で取引されることもあります。
ただし、これらの価格はあくまで一例です。旧車の値段は、車両のコンディション、修復歴、オリジナルパーツの有無、そして販売する専門ショップによって大きく変動します。もし購入を検討する場合は、信頼できるショップで専門家のアドバイスを受けながら、慎重に判断することが何よりも重要です。また、購入後の維持費や修理費用も現代のクルマとは比較にならないほど高額になる可能性がある点も、必ず念頭に置いておくべきでしょう。
伝説のグレード、ハコスカとケンメリのGTR
スカイラインの歴史において、「GT-R」というグレードは常に特別な存在です。中でも、その初代と2代目を担ったハコスカGT-RとケンメリGT-Rは、それぞれが全く異なる理由で「伝説」として語り継がれています。この2台は、同じS20型エンジンを搭載しながらも、その運命は光と影のように対照的でした。
ハコスカGT-Rは、「勝者の伝説」を築き上げたモデルです。そもそもはレースで勝利するために開発されたクルマであり、その期待に応えるかのように、国内のツーリングカーレースでは通算50勝以上という前人未到の金字塔を打ち立てました。心臓部には、当時の市販車としては考えられないほどの高性能を誇るS20型DOHCエンジンを搭載。その圧倒的な強さと速さが、ハコスカGT-Rを揺るぎない伝説の存在へと押し上げたのです。
一方、ケンメリGT-Rは「悲運の伝説」を持つモデルとして知られています。前述の通り、ハコスカGT-Rの後継として華々しくデビューしたものの、排出ガス規制という時代の大きな壁に阻まれ、一度もレースの舞台に立つことなく、わずか4ヶ月で生産中止に追い込まれました。
しかし、この悲劇的な背景と、わずか197台という極端なまでの希少性が、逆にその存在を神格化させる結果となったのです。もしレースに出ていればどれほどの活躍を見せたのか、というファンの尽きない想像が、ケンメリGT-Rの伝説をより一層深みのあるものにしています。
項目 | ハコスカGT-R | ケンメリGT-R |
---|---|---|
伝説のタイプ | 栄光の勝者 | 悲運の幻 |
エンジン | S20型 直列6気筒DOHC | S20型 直列6気筒DOHC |
最高出力 | 160PS / 7,000rpm | 160PS / 7,000rpm |
最大トルク | 18.0kgm / 5,600rpm | 18.0kgm / 5,600rpm |
生産台数 | 約1,945台 | 約197台 |
レース戦績 | 50勝以上 | 出場なし |
このように、同じGT-Rの称号とエンジンを持ちながら、全く異なる道を歩んだ2台。レースでの輝かしい栄光によって伝説となったハコスカと、その舞台に立つことすら叶わなかった希少性によって伝説となったケンメリ。どちらもスカイラインGT-Rの歴史を語る上では欠かすことのできない、永遠のヒーローと言えるでしょう。
ハコスカ・ケンメリ・ジャパンの中古車事情

ハコスカ、ケンメリ、そしてジャパン。これらのスカイラインを手に入れようと考えたとき、避けては通れないのが現在の中古車事情です。結論から言うと、いずれのモデルも価格は高騰の一途をたどっており、特にハコスカとケンメリはもはや簡単には手の届かない、文化財に近い存在となりつつあります。
その大きな理由として、50年近い年月を経て現存する個体数が非常に少なくなっていることに加え、国内の根強い人気、さらには海外のコレクターからの需要が重なったことが挙げられます。特にハコスカとケンメリは、その象徴的なスタイルと歴史的価値から、投機目的の対象と見なされることもあり、相場をさらに押し上げています。
一方で、5代目にあたるジャパンは、ハコスカやケンメリと比較すれば、まだ現実的な価格帯の車両が見つかる可能性があります。それでも一般的な中古車の感覚からすれば十分に高価ですが、憧れの旧世代スカイラインへの入り口としては、有力な選択肢となるかもしれません。
ただし、ここで注意すべきは部品供給の問題です。ハコスカとケンメリについては、その絶大な人気から、様々なメーカーが復刻部品(リプロダクションパーツ)を製造・販売しています。そのため、専門のショップに依頼すれば、多くの部品は入手可能であり、レストアを進めやすい環境が整っていると言えます。
これに対しジャパンは、残念ながら復刻部品の種類が少なく、オリジナルの部品を探し出すのは困難を極めます。購入後の維持や修理には、より深い知識と信頼できるショップとのネットワークが不可欠となるでしょう。いずれのモデルを選ぶにせよ、車両本体価格だけでなく、その後の維持費やメンテナンス計画まで含めて、長期的な視点で検討することが求められます。
ユーザーからの評価や感想レビュー
ハコスカやケンメリといった伝説的な旧車は、実際に所有しているオーナーからどのような評価を受けているのでしょうか。その感想やレビューを総合すると、現代のクルマでは決して味わうことのできない「運転の楽しさ」と、それを所有する「格別な喜び」を絶賛する声が圧倒的に多いようです。しかしその一方で、維持していくことの難しさや苦労についても、多くのオーナーが口を揃えます。
ポジティブな評価として最も多く聞かれるのは、クルマとの一体感です。パワーステアリングやエアコンといった快適装備が備わっていないため、路面の状況やエンジンの鼓動がダイレクトにドライバーに伝わります。
キャブレターが空気を吸い込む音、メカニカルなエンジン音、そして体に響く振動。これら五感で感じる全てが「クルマを自分の手足で操っている」という実感に繋がり、何物にも代えがたい魅力となっているのです。また、その唯一無二のデザインは、どこへ行っても人々の注目を集め、オーナーであることの優越感や満足感を満たしてくれます。
もちろん、良いことばかりではありません。ネガティブな評価としては、やはり快適性の低さが挙げられます。夏はエンジンの熱気で暑く、冬は暖房が十分に効かないこともあります。また、旧車ゆえの突然の故障は日常茶飯事であり、部品探しに奔走したり、高額な修理費用に頭を悩ませたりすることも少なくありません。「ロマンだけでは乗り続けられない」というのが、多くのオーナーが共有する本音でもあるでしょう。
結局のところ、ハコスカやケンメリを所有するということは、単に移動手段としてクルマを持つこととは全く次元の異なる、一つのライフスタイルそのものと言えます。手間や費用といった数々のハードルを乗り越えてでも付き合っていきたいと思わせる、強烈な魅力と深い喜びがそこにはあるのです。
ハコスカとケンメリの決定的な違いを総括
ハコスカとケンメリは、世代やデザイン、愛称の由来に明確な違いがあります。レースで輝いたハコスカに対し、CMで絶大な人気を得たケンメリ。この対照的な歴史やGT-Rの伝説、希少性の違いが現在の中古車価格にも影響を与えており、どちらも旧車の象徴として多くのファンを魅了しています。
記事のポイントをまとめます。
- ハコスカは3代目、ケンメリは4代目のスカイライン
- ハコスカの愛称は「箱型」のボディ形状に由来する
- ケンメリの愛称は「ケンとメリー」のCMから生まれた
- ボディは角張ったハコスカに対しケンメリは流線形
- 象徴的な丸型4灯テールはケンメリから本格採用された
- ヨンメリは4ドア仕様のケンメリを指す愛称
- ケンメリはハコスカの2倍以上にあたる約67万台を販売
- ハコスカGT-Rはレースでの輝かしい功績により伝説となった
- ケンメリGT-Rは排ガス規制で生産中止された悲運のモデル
- ケンメリGT-Rの生産台数はわずか197台と極めて希少
- 中古車市場では希少性の高いケンメリが高値で取引される傾向
- GT-Rの価格は数千万円で、ケンメリGT-Rは5千万円超の例もある
- ケンメリ以降に5代目ジャパンや6代目鉄仮面が登場した
- 部品供給はハコスカやケンメリの方がジャパンより恵まれている
- オーナーは運転の楽しさと維持の大変さを共に評価する