
イタリアの情熱をその小さなボディに凝縮したアバルト595。その唯一無二のデザインと心躍るサウンドに、強く惹かれているのではないでしょうか。しかし、一歩踏み込もうとすると、インターネット上の様々な情報が判断を鈍らせます。
オーナーによる口コミや感想レビューを読み漁り、時には故障ブログにたどり着いては、本当に壊れやすいのではないかと不安になる。乗ってる人のイメージや華やかな芸能人オーナーの姿に憧れを抱く一方で、路上では煽られるという噂に眉をひそめ、実際の燃費や、意外と遅いという評価も気になるところです。
さらに、シリーズ最強モデルはどれか、595と695の違いは何か、中古で購入する際の注意点や欠点はないか、そして最近の生産終了のニュースがどう影響するのかまで、知りたいことは尽きません。
これら全ての疑問が重なると、「アバルト595を手に入れて後悔しないだろうか、いっそやめとけという声を信じるべきか」という迷いに行き着くのも無理はありません。この記事では、そうしたあなたのあらゆる懸念に正面から向き合い、購入後のリアルを徹底的に解説します。
この記事を読むことで、以下の点が明確になります。
- 「やめとけ」と言われる具体的な理由とその背景
- 故障リスクや燃費、維持費などの現実的な側面
- グレードごとの性能差やモデル選びのポイント
- オーナーのイメージや生産終了後の市場価値
アバルト595で後悔?やめとけの声を検証

- 口コミや感想レビューに見る評価
- 壊れやすい?故障ブログに見る実態
- 中古購入の注意点と知っておくべき欠点
- 街乗りでの燃費はどのくらいなのか
- 加速が遅いという意見は本当か
- なぜ煽られる?その理由を分析
口コミや感想レビューに見る評価
アバルト595に関するユーザーの声を紐解くと、その評価はまさに「光と影」のように、鮮やかなコントラストを描き出します。この車が持つ強烈な個性は、オーナーとなる人に唯一無二の体験を提供する一方で、ライフスタイルによっては受け入れがたい側面も持ち合わせているのです。
五感を刺激する「楽しさ」という圧倒的な魅力
多くのオーナーが口を揃えて絶賛するのが、その官能的なドライビング体験です。特に、アバルトの象徴ともいえるエンジンサウンドは、多くのレビューで特筆されています。
特に上位グレードに標準装備される高性能エキゾーストシステム「レコードモンツァ」が奏でる、野太く情熱的なサウンドは、アクセルを踏み込むたびにドライバーの心を高揚させます。
また、コンパクトなボディと引き締められた足回りが生み出す、俊敏なハンドリング性能も高く評価されています。ステアリング操作に対して車が即座に反応するダイレクト感は、「車と対話しているようだ」と評され、単なる移動手段としての車の概念を覆すほどの楽しさを提供します。
これらの要素が組み合わさることで生まれる「五感を刺激するエモーショナルな走り」は、実用性や快適性といった指標では測れない、アバルト595ならではの価値と言えるでしょう。
「割り切り」を求められる実用性と快適性
その一方で、スポーツ性能を追求した代償として、快適性や実用性に関するネガティブな意見も少なくありません。最も多く指摘されるのが、硬質な乗り心地です。
路面の細かな凹凸や段差を正直に拾うため、長距離のドライブや荒れた路面では疲労を感じやすいという声が挙がっています。特に同乗者からは不満が出やすく、家族での利用を考えるユーザーにとっては大きな懸念点となります。
収納スペースの少なさや、後部座席の居住性も実用性を制限する要因です。ラゲッジスペースは日常的な買い物には対応できるものの、大きな荷物や旅行用のスーツケースを積むには工夫が必要です。あくまで「2+2シーター」と割り切るべき後部座席は、大人が長時間過ごすには窮屈さが否めません。
これらの評価から浮かび上がるのは、アバルト595が「万能な優等生」ではなく、「一点特化型の天才」であるという事実です。日常の利便性や家族との快適な移動を最優先するならば、他の選択肢が賢明かもしれません。
しかし、非日常的な運転の楽しさ、所有する喜び、そして他にはない個性を何よりも重視するユーザーにとって、アバルト595は他に代えがたい最高のパートナーとなり得るのです。
壊れやすい?故障ブログに見る実態

「イタリア車は故障が多い」という古くからの定説は、アバルト595の購入を検討する多くの人々にとって、無視できない不安要素です。実際のところ、その信頼性はどの程度なのでしょうか。オーナーによる故障ブログや整備工場のレポートを分析すると、特定のコンポーネントにトラブルが集中する傾向が見えてきます。
最も注意すべきはMTA(デュアロジック)
アバルト595の故障事例として最も頻繁に報告されているのが、MTA(マニュアル・トランスミッション・オートメーテッド)、通称「デュアロジック」と呼ばれるセミオートマチックトランスミッションの不具合です。これは、MTをベースにクラッチ操作とシフトチェンジを自動化したもので、その複雑な構造がトラブルの一因となっています。
具体的には、油圧を制御するアキュムレーターやポンプの劣化により、ギアがスムーズに入らなくなったり、最悪の場合は走行不能に陥ったりするケースがあります。これらの修理にはユニット一式の交換が必要となることもあり、数十万円単位の高額な費用が発生する可能性があります。
MTAの寿命は走行状況にもよりますが、一般的に5万km前後が一つの目安とされており、中古車で購入する際は特に注意深い確認が求められます。
走行に支障のない細かな不具合
走行性能に直接影響しないものの、オーナーを悩ませる細かなトラブルも報告されています。
- 電装系
エアコンのコンプレッサー故障や、パワーウィンドウの動作不良、原因不明の警告灯点灯などが挙げられます。 - 内外装部品
経年劣化によるウォッシャーホースの破れや、テールランプ内のエンブレムが点灯しなくなる「サソリ切れ」と呼ばれる現象も、このモデル特有の事例として知られています。
これらのトラブルは、輸入車特有の部品代の高さや、国内在庫がなく本国からの取り寄せに時間がかかるといった問題につながり、オーナーの経済的・時間的負担となることがあります。
近年における信頼性の向上とMTという選択肢
ただし、全ての個体が等しく壊れやすいわけではありません。年々改良が重ねられ、特に近年の高年式モデルでは初期モデルに比べて信頼性が大幅に向上しているという意見も多くあります。
また、故障リスクを抜本的に低減する最も有効な手段は、マニュアルトランスミッション(MT)モデルを選択することです。構造がシンプルであるため、MTAのような高額なミッショントラブルに見舞われる可能性は極めて低くなります。
アバルト本来のダイレクトな走りを楽しむという意味でも、MTモデルは非常に賢明な選択肢と言えるでしょう。最終的に、信頼できる専門店で定期的なメンテナンスを欠かさず行うことが、アバルト595と長く付き合うための鍵となります。
中古購入の注意点と知っておくべき欠点

アバルト595のガソリンエンジン搭載新車は2024年に生産が終了し、現在では中古車市場がこの魅力的なホットハッチを手に入れるための主戦場となっています。
しかし、その特殊なキャラクターゆえに、一般的な中古車選びと同じ感覚で購入すると、後に思わぬ「後悔」につながる可能性があります。ここでは、致命的な失敗を避けるための具体的なチェックポイントと、設計に起因する構造的な欠点を解説します。
購入前に必ず確認すべき5つの生命線
状態の良い個体を見極めるためには、以下のポイントを重点的にチェックすることが不可欠です。特に専門店の知見を借りながら、慎重に判断を進めることをお勧めします。
チェック項目 | 確認すべき内容と、その理由 |
---|---|
整備記録簿の有無と内容 | どのような整備が、いつ、どこで行われたかの証明。特にエンジンオイルの交換周期(メーカー推奨は1年または1.5万kmだが、専門店の多くは5,000km前後を推奨)が適切であったかは、エンジンの寿命に直結します。 |
MTAユニットの状態(MTA車) | 試乗時に変速ショックが過大でないか、異音や警告灯の点灯がないかを確認。可能であれば診断機によるエラーコードのチェックや、MTAフルードの交換履歴を確認することが望ましいです。 |
サスペンションからの異音・オイル漏れ | 特にKONI製ダンパー装着車は、構造上オイル漏れが発生しやすい傾向にあります。段差を乗り越えた際に「コトコト」といった異音が発生する場合、アッパーマウントの劣化なども考えられます。 |
タイヤの摩耗状態 | タイヤの内側だけが極端に減る「偏摩耗」は、アライメントが狂っているサイン。過度なローダウンや、縁石へのヒットなどが原因として考えられ、足回り全体のチェックが必要です。 |
内外装のカスタム状況 | エンジンチューニング(ECU書き換えなど)は、パワーアップと引き換えにエンジンや駆動系への負担を増大させます。どのようなパーツが使われているか、純正部品は保管されているかを確認しましょう。 |
設計に起因する、知っておくべき2つの構造的欠点
故障とは別に、アバルト595が持つ構造上の特徴、いわば「仕様としての欠点」も理解しておく必要があります。これらは修理で改善するものではないため、自身の許容範囲にあるかを試乗で見極めることが極めて重要です。
- 独特すぎるドライビングポジション
アバルト595のステアリングには、上下方向のチルト調整機能しか備わっておらず、前後方向のテレスコピック調整ができません。これにより、ペダルに合わせるとハンドルが遠い、ハンドルに合わせるとペダルが近い、という状況に陥りがちです。また、シートの座面自体が高く、一般的なスポーツカーのような低い着座位置を期待すると、トラックを運転しているような感覚に戸惑うかもしれません。 - 見た目に反する小回りの効かなさ
全長3.7m弱というコンパクトな見た目から、キビキビと小回りが利くと思われがちですが、その最小回転半径は5.4mにも達します。これは、トヨタのヤリスクロス(5.3m)やマツダのCX-3(5.3m)といった、ひと回り大きなSUVと同等、あるいはそれ以上の数値です。このため、狭い路地でのUターンや車庫入れでは、想定以上に切り返しを要求される場面に遭遇します。
これらの特徴は、アバルト595という車の個性を形成する要素の一部です。購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、デザインや性能だけでなく、こうした現実的な側面を十分に理解し、納得した上で決断することが大切です。
街乗りでの燃費はどのくらいなのか

アバルト595の魅力である情熱的な走りは、その代償として燃費性能に現れます。この車を検討する上で、維持費に直結する燃料消費の実態を正確に把握しておくことは、購入後の満足度を大きく左右する重要な要素です。現代の環境性能を重視したエコカーとは一線を画す、その現実的な数値を見ていきましょう。
カタログスペックと実燃費の乖離
まず、メーカーが公表しているカタログ燃費(WLTCモード)は、グレードやトランスミッションによって異なりますが、概ね13km/L台から14km/L台前半に設定されています。WLTCモードは「市街地」「郊外」「高速道路」という3つの走行モードを想定した国際的な燃費測定基準であり、従来の測定方法よりも実態に近いとされています。
しかし、多くのオーナーが報告する実燃費は、このカタログスペックを下回るケースがほとんどです。特に、ストップ&ゴーが頻発する都心部での街乗りがメインの場合、実燃費は8~11km/L程度に落ち込むことが一般的です。
これは、アバルト595に搭載される1.4Lターボエンジンが、効率よりも高出力を優先した設計思想に基づいているためです。ターボチャージャーを活かして力強い加速を得る場面では、必然的に多くの燃料を消費します。
燃費を悪化させる具体的な要因
アバルト595の燃費は、ドライバーの運転スタイルや環境によって大きく変動します。
- SPORTモードの使用
ダッシュボードにある「サソリのボタン」を押してSPORTモードを選択すると、エンジンのレスポンスやステアリングフィールがより鋭敏になります。これは運転の楽しさを倍増させる魅力的な機能ですが、スロットル感度が高まるため燃料消費も増大します。 - 運転スタイル
急加速や急減速を繰り返すアグレッシブな運転は、燃費を著しく悪化させます。逆に、穏やかなアクセルワークを心がけ、無駄な加減速を避けることで、燃費をある程度向上させることは可能です。 - 使用環境
エアコンの使用頻度が高まる夏場や、渋滞の多い都市部では燃費が悪化する傾向にあります。一方で、信号の少ない郊外の道を一定のペースで走行するような環境では、15km/L近い数値を記録することもあります。
また、アバルト595はハイオクガソリン仕様である点も忘れてはなりません。レギュラーガソリンに比べて単価が高いため、同じ燃費の車と比較しても燃料費は割高になります。年間走行距離が多いユーザーほど、この燃料費の差は大きな負担としてのしかかってくる可能性があります。
走りの楽しさと引き換えに、ある程度の燃料費は覚悟しておくべき、それがアバルト595という車の偽らざる姿です。
加速が遅いという意見は本当か

インターネットのレビューなどで時折見られる「アバルト595は加速が遅い」という評価は、この車の持つポテンシャルを正しく理解していないことから生じる誤解である場合がほとんどです。車重約1.1トンの軽量なボディに、最大180PSを発生する強力なターボエンジンを搭載したこのマシンの絶対的な加速力は、コンパクトカーの枠を遥かに超えています。
数値が証明する卓越した動力性能
客観的なデータを見れば、その実力は明らかです。最上位グレードである「595 Competizione」の0-100km/h加速タイムは6.7秒。
これは、一昔前の大排気量スポーツカーに匹敵する、非常に優れた数値です。この俊足ぶりを支えるのが、パワーと車重のバランスを示す「パワーウェイトレシオ」です。
Competizioneの場合、その値は約6.2kg/PSとなり、これはスズキ スイフトスポーツ(約6.9kg/PS)をも上回る数値であり、いかに加速性能に優れているかが分かります。
グレード | 最高出力 | 最大トルク | 0-100km/h加速 |
---|---|---|---|
595(ベースグレード) | 145PS | 210Nm | 7.8秒 |
F595 / Turismo | 165PS | 230Nm | 7.3秒 |
595 Competizione | 180PS | 250Nm | 6.7秒 |
「遅い」と感じさせる要因の分析
では、なぜ一部で「遅い」という印象が生まれるのでしょうか。その原因は、主に2つ考えられます。
- ターボラグの存在
アバルト595のエンジンは、いわゆる「ドッカンターボ」の気質を持っています。低回転域では比較的穏やかですが、特定の回転数(約3,000rpm)を超えると過給圧が一気に高まり、爆発的な加速が始まります。このターボが効き始めるまでの僅かな「タメ」の時間を、大排気量の自然吸気エンジンのようなリニアな加速感に慣れた人が「遅い」と感じてしまうのです。 - MTAの挙動
セミオートマチックであるMTAは、ATモードのままだと、時にドライバーの加速意図と変速タイミングが合致しないことがあります。この意図しないシフトアップによる一瞬の失速感が、加速の鈍さとして認識されることがあります。このトランスミッションの真価は、ステアリングのパドルシフトを駆使するマニュアルモードでこそ発揮されます。自らの手で最適なギアを選択し、エンジンのパワーバンドを維持することで、MTAはダイレクトで途切れのない加速感を提供してくれます。
結論として、アバルト595は決して「遅い車」ではありません。むしろ、そのポテンシャルを最大限に引き出すためには、乗り手が車の特性を理解し、積極的にマシンを操る姿勢が求められる「玄人好みのマシン」であると言えるでしょう。
なぜ煽られる?その理由を分析

アバルト595のオーナーの間で、しばしば話題に上るのが「路上で他の車から不必要に意識され、煽られることがある」という現象です。
これは単なる気のせいではなく、アバルト595が持つ複数の特徴が、他のドライバーの心理を無意識のうちに刺激している結果と考えられます。その背景には、視覚と聴覚に訴えかける、この車ならではの強烈な個性があります。
1. 視覚情報が引き起こす誤解と競争心
まず、その見た目が大きな要因となっています。フィアット500譲りのコンパクトで愛らしいフォルムは、特に大型車からは「小さく、か弱い存在」として認識されがちです。道路上では、残念ながら「大きい方が強い」という無意識の序列が働きやすく、アバルト595は車間距離を詰められたり、進路を譲るべき対象と見なされたりするリスクを抱えています。
その一方で、アグレッシブなデザインのエアロパーツや、ボンネットとリアゲートに輝く「サソリ」のエンブレム、そして鮮やかなボディカラーは、その小さな体躯とは裏腹に、極めてスポーティで挑戦的な印象を与えます。
この「可愛らしさ」と「攻撃性」のギャップが、一部のドライバーの競争心を煽り、「あの小さな車に負けたくない」という感情を誘発してしまうのです。
2. 聴覚情報が与える「挑発」という誤解
アバルト595のアイデンティティとも言える、勇ましいエキゾーストノートも、時としてトラブルの引き金となります。特に「レコードモンツァ」マフラーから放たれる、低く唸るようなアイドリング音や、加速時の咆哮は、この車のオーナーにとっては至福の音楽です。
しかし、その音に馴染みのない他のドライバーにとっては、単なる「騒音」や、意図的な「威嚇」「挑発」と受け取られかねません。本人は音楽を奏でるように軽くアクセルを煽っただけでも、後続車のドライバーは「競争を仕掛けられた」と誤解し、攻撃的な運転で応じてくるというケースは少なくありません。
トラブルを回避するための心構え
これらの要因から、アバルト595に乗る際は、自分が思っている以上に周囲から注目されているという意識を持つことが大切です。対策としては、後方録画対応のドライブレコーダーを設置し、その存在をステッカーなどでアピールすることが、煽り運転に対する有効な抑止力となります。
また、住宅街や渋滞時など、周囲への配慮が求められる場面では、SPORTモードをオフにし、穏やかなアクセルワークを心がけるといった、紳士的な運転を実践することも、無用なトラブルを避けるための重要なテクニックです。
アバルト595の「やめとけ」は本当?後悔しない判断基準

- 乗ってる人のイメージと芸能人オーナー
- シリーズ最強モデルの実力をチェック
- 595と695の違いをわかりやすく解説
- 生産終了による中古車市場への影響
乗ってる人のイメージと芸能人オーナー
アバルト595という車は、単なる移動手段を超え、オーナーの価値観やライフスタイルを雄弁に物語るアイコンとしての側面を強く持っています。この車を選ぶ人々には、社会的なステータスや流行に流されるのではなく、自らの感性や哲学に基づいてモノを選ぶという、確固たる姿勢が共通して見られます。
オーナー像:個性を愛する「本質志向」の人々
アバルト595のオーナーは、しばしば「クルマ好きの中でも特に運転そのものを愛する人」と評されます。彼らはスペックシート上の数値を追い求めるのではなく、エンジンサウンド、ステアリングの手応え、加速時のGといった、身体全体で感じるフィーリングを重視します。
また、そのイタリア車ならではの独創的で美しいデザインに価値を見出し、ガレージに収まっている姿を眺めることさえも喜びと感じるような、深い愛情を注ぐ傾向があります。
ライフスタイルにおいては、ファッション、インテリア、食といった分野でも、大量生産品ではない、作り手のこだわりが感じられるものを好む人が多いようです。それは、アバルトというブランドが持つ、レースの歴史に裏打ちされたストーリー性や、職人的なモノづくりの精神に共鳴するからでしょう。
愛らしい見た目から女性オーナーも少なくありませんが、彼女たちもまた、単に「かわいい」という理由だけでなく、その内に秘められた「サソリの毒」と称される刺激的な走りの魅力に惹かれています。
著名人が選ぶ理由:唯一無二の存在感
この唯一無二のキャラクターは、常に個性を求められる世界の住人である多くの著名人をも惹きつけてやみません。
- 高橋ひとみさん
長年にわたりアバルトを愛用していることで知られ、そのライフスタイルと共にメディアで紹介されることも多く、成熟した大人の女性が選ぶお洒落な車としてのイメージを確立しています。 - 哀川翔さん
生粋のカーマニアとして知られる彼が選ぶ一台であることは、アバルト595が持つ走りの本物さを証明していると言えるでしょう。 - おぎやはぎのお二人
クルマ好きとして有名な彼らが揃ってオーナーであることは、自動車好きのコミュニティにおいてアバルト595の評価を不動のものにしています。
これらの著名人がアバルト595を選ぶ理由は、その絶対的な性能の高さだけでなく、「他とは違う」という強烈な個性と、わかる人にはわかるというある種の「通」な選択である点にあると考えられます。
彼らの存在は、アバルト595がただの高性能コンパクトカーではなく、オーナーのセンスを象徴する特別な一台であることを、世に知らしめているのです。
シリーズ最強モデルの実力をチェック

アバルト595のラインナップにおいて、「最も刺激的で、最もアバルトらしい」と評されるのが、頂点に君臨する「595 Competizione(コンペティツィオーネ)」です。「Competizione」とはイタリア語で「競争」「競技」を意味し、その名は公道からサーキットまでを視野に入れた、一切の妥協なきモデルであることを示唆しています。
パフォーマンスを構成する珠玉のメカニズム
「シリーズ最強」の称号は、伊達ではありません。その心臓部から足回り、そしてドライバーが直接触れるインターフェースに至るまで、走りのパフォーマンスを最大化するための専用装備が惜しみなく投入されています。
コンポーネント | Competizione専用装備と、その効果 |
---|---|
エンジン | 1.4L Garrett製大径ターボチャージャー: シリーズ最高の180PS/250Nmを発生。高回転域での伸びやかなパワーフィールと、胸のすくような加速力を実現します。 |
エキゾースト | レコードモンツァ・ハイパフォーマンスエキゾースト: 可変バルブを備え、回転数に応じてサウンドが変化。低回転ではジェントルに、高回転では魂を揺さぶるレーシーな咆哮を奏でます。 |
サスペンション | KONI製FSDショックアブソーバー(前後): FSD(Frequency Selective Damping)は、路面からの入力周波数に応じて減衰力を自動で最適化する技術。コーナリング時の安定性と、日常域での乗り心地を高次元で両立させます。 |
ブレーキ | Brembo製4ポッドフロントブレーキキャリパー: 世界最高峰のブレーキブランドであるブレンボ製の対向4ピストンキャリパーを装備。強力なストッピングパワーと、繊細なコントロール性を提供し、サーキット走行にも対応します。 |
シート | Sabelt製スポーツシート: レーシングハーネスで知られるサベルト社製のバケットタイプシート。高いホールド性で、強烈な横Gの中でもドライバーの身体を確実に支え、正確な操作をサポートします。 |
これらの本格的なレーシングパーツの採用からも明らかなように、595 Competizioneは快適性や利便性よりも、ドライビングの純粋な喜びを最優先に設計されています。その乗り味は硬派そのもので、路面の情報を克明に伝え、エンジンの鼓動と排気音は常にキャビンを満たします。
しかし、そのスパルタンさと引き換えに得られる、車と一体となるようなダイレクトな操縦感覚とスリリングな加速感は、他の何物にも代えがたい、このモデルならではの至福の体験です。アバルトの真髄、いわゆる「サソリの毒」を最も深く味わいたいと願うなら、このCompetizioneこそが究極の選択肢となります。
595と695の違いをわかりやすく解説

アバルトのモデルラインナップを語る上で、しばしば混同されがちなのが「595」と「695」という2つの数字です。これらは共にフィアット500をベースとしながらも、その立ち位置とキャラクターには明確な階層が存在します。
「595」が高性能なカタログモデルの主力であるとすれば、「695」はそれをさらに超えるパフォーマンスと希少性を与えられた、特別な存在と言えます。
「695」とは、究極を追求したスペシャルモデル
歴史的に見ても、「695」の名は、アバルトが特別なチューニングを施した限定生産のハイエンドモデルに与えられてきました。
例えば、過去に発売された「695 Tributo Ferrari(トリブート・フェラーリ)」や「695 Rivale(リヴァーレ)」のように、他の高級ブランドとのコラボレーションや、特定のテーマに基づいて内外装に特別な素材を使用し、エンジンも専用のチューニングが施されることが通例です。
具体的な相違点:素材と装備のアップグレード
595(特にCompetizione)と695の具体的な違いは、パフォーマンスのさらなる追求と、内外装の質感向上に集約されます。
- 内外装の素材
695では、ダッシュボードパネルやシートバックシェル、ドアミラーカバーといった内外装の随所に、軽量かつ高剛性なリアルカーボンファイバーがふんだんに使用されます。また、ステアリングやシートの表皮には、高級スポーツカーの定番であるアルカンターラが用いられることも多く、視覚的にも触覚的にも、よりレーシーでプレミアムな空間を演出します。 - 専用装備
695には、そのモデル専用にデザインされたアルミホイールや、特別なカラーリングが施されたブレーキキャリパー、専用のボディストライプなどが与えられ、一目で通常モデルとは異なる存在であることがわかります。オーディオシステムにおいても、ハイエンドなブランドのスピーカーが搭載されるなど、細部にわたってアップグレードが図られます。 - エンジンとパフォーマンス
エンジン出力は595 Competizioneと同じ180PSが基本となることが多いですが、限定モデルによっては吸排気系にさらなるチューニングが施され、よりシャープなレスポンスを実現している場合があります。 - 希少性と価格
695は限定生産であることが多く、その希少性からコレクターズアイテムとしての価値も持ち合わせています。そのため、新車時の価格は595よりも大幅に高く設定され、中古車市場においても高値で取引される傾向にあります。
要約すると、595が「高性能なスポーツカー」であるならば、695は「贅を尽くした工芸品のような、特別なスポーツカー」です。日常的な走りの中に非日常の刺激を求めるなら595が、そして所有する喜びと資産価値をも含めた究極の一台を求めるなら695が、それぞれ最適な選択となるでしょう。
生産終了による中古車市場への影響

2024年5月、アバルトはブランドの電動化戦略に基づき、日本市場向けのガソリンエンジン搭載モデル「F595」および「695」の生産を終了するという、歴史的な発表を行いました。
この決定は、長年にわたり多くのファンを魅了してきた内燃機関の時代に一つの区切りをつけ、アバルト595という存在を新たなフェーズへと移行させることを意味します。この「生産終了」という事実は、今後の中古車市場において、価格、価値、そして車両の維持という3つの側面で深刻な影響を及ぼすことが確実視されています。
1. 希少価値の高まりと中古車価格の上昇
市場の原理として、供給が停止すれば、需要が一定である限り価格は上昇します。新車という供給源が断たれた今、コンディションの良いアバルト595を求める需要は、既存の中古車市場に集中することになります。これにより、特に以下のような特徴を持つ個体の価格は、今後さらに上昇していくと予測されます。
- 高年式・低走行距離の車両
最終モデルに近い、走行距離の少ない個体は「新車に近い最後のガソリンモデル」として、プレミア価値が付く可能性があります。 - 人気の限定車や特別仕様車
もともと希少性の高い限定モデルは、その価値が再評価され、コレクターズアイテムとして価格が急騰することも考えられます。 - マニュアルトランスミッション搭載車
信頼性とダイレクトな操縦性から人気の高いMTモデルは、MTAモデルとの価格差がさらに開いていく可能性があります。
この状況は、アバルト595が単なる「中古車」から、その価値が時と共に増す可能性を秘めた「資産」へと、その性格を変えつつあることを示しています。
2. 車両維持における長期的視点の重要性
生産終了は、将来的な部品供給にも影響を与えます。メーカーによる純正部品の供給は、法的に定められた期間は保証されますが、それを過ぎると、特定の部品が入手困難になったり、価格が高騰したりするリスクが考えられます。
しかし、アバルト595は世界中に熱心なオーナーとコミュニティが存在するため、過度な心配は不要かもしれません。純正部品以外にも、専門メーカーによる高品質なリプロダクションパーツや、パフォーマンスを向上させるアフターマーケットパーツが豊富に存在します。
今後は、こうしたサードパーティ製品を賢く活用したり、部品取り車から必要なパーツを確保したりといった、旧車(クラシックカー)の維持に近い知識とネットワークが、オーナーに求められるようになるでしょう。信頼できる専門ショップとの良好な関係を築いておくことが、これまで以上に重要になってきます。
アバルト595で後悔しない、やめとけは誤解!総括
アバルト595について「やめとけ」という声があるのは、硬い乗り心地や限られた実用性など、知らずに選ぶと後悔につながる点があるためです。しかし、それらを凌駕する唯一無二の運転の楽しさがこの車の本質です。尖った個性を深く理解し、受け入れられる方にとって後悔は無く、最高のカーライフを約束してくれる一台です。
記事のポイントをまとめます。
- アバルト595は運転の楽しさを最優先する人のための特別な一台
- 実用性や快適性、燃費を重視する場合には不向きな側面がある
- 口コミは「最高に楽しい」と「乗り心地が硬い」にはっきりと二分
- MTA搭載車は構造を理解し、信頼できる工場での点検が不可欠
- MT車はミッション関連の大きな故障リスクが比較的少ないと言える
- 独特なドライビングポジションは購入前の試乗で必ず確認すべき点
- 最小回転半径が大きく、見た目より小回りが効かないことに注意
- 燃費は市街地で10km/L前後と、経済性を求める車ではない
- 180PSモデルの加速力はコンパクトカーとしてトップクラスの性能
- 「遅い」という評価は低回転域やMTAの特性による誤解が多い
- 小さな車体と派手な外観から、路上で煽られる傾向があるとの声
- オーナーは個性的でお洒落なイメージを持たれ、芸能人にも人気
- シリーズ最強のコンペティツィオーネはサーキット志向の硬派モデル
- 695は595をベースにした、より豪華で希少性の高い特別仕様車
- 2024年5月でガソリンモデルの生産は終了し、希少価値が上昇中
- 中古車価格は今後上昇する可能性が高く、購入検討は早めが賢明
- 多くの欠点は、このクルマの強烈で魅力的な個性の裏返しである
- 「やめとけ」は万人向けではないという意味であり、誤解も含まれる
- クルマの特性を深く理解すれば、後悔を遥かに上回る喜びが得られる